《視点》あの頃よりも

2020/05/21 06:23 更新


 コロナ禍による約2カ月間の蟄居(ちっきょ)生活。なんだか、前にもあったなこの感じ、と思い返してみれば、それは数年前の育休期間だった。

 新生児は、生後2カ月間はあまり外へは出さない方が良いとされる。時折出産を祝ってくださる来客があるものの、基本的には家に子供と2人きり。退院後3、4カ月経て、初めて子連れでカフェに行った時の緊張と開放感を覚えている。あの頃の方が、もっとこもっていて、世の中との隔絶感があった。

 今は、子守り付きテレワークのはかどらなさは悩みどころだが、散歩くらいなら子供と出られるし、何よりオンラインでの会議や取材が可能となり、社会とのつながりが保たれている点に健全さがある。フェイスタイムで、会えないジィジ、バァバに孫の顔を見せることもできる。大型連休中は、リアルでは開催中止となった益子の陶器市が急きょ開いたウェブ陶器市をのぞき、行ったつもりで楽しめた。

 いずれも、ここ数年でぐっと発達したデジタルの恩恵によるものだ。この事態が終息した後も、外出がままならない人の可能性を広げ、心の安定を図るユニバーサルなツールとして、一層活用が広がりそうだ。

(維)



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