こんな時に何言ってんだとあきれられそうだが、無性に服屋に出かけたい。雑誌『ペン』によるオンラインドラマ「東京古着日和」を見たからだ。〝名バイプレーヤー〟と言われる俳優の一人、光石研さんが独りで東京の古着屋を訪れ、ユニークな古着との出合いに心を躍らせるストーリー。心理描写がリアルでおもしろい。ドラマ化された漫画『孤独のグルメ』の古着版といったところか。
第1話はデッドストックにフォーカスした内容で、軍モノなどの希少品が登場する。店内の雰囲気をじっくりと感じ取りつつ、気になる物を一つひとつ手に取って、試着しながら吟味していく。〇年代は〇軍のコートのディテールがどうだとか、心の中で感心したり、驚いたりして、あれもいいし、これもいいけど全部買えない、じゃあどうする――なんて葛藤の末に自分にとっての逸品を選ぶ。自分も同じように楽しんでたな、と共感するポイントが多い。
ファッションは不要不急のものではないが、心を豊かにするものの一つではあるはず。光石さんの楽しそうな表情を眺めていると、改めてファッションの本質的な価値を感じられた。
(嗣)