《商社のクラウドファンディング活用広がる㊦》高機能製品を試せる場

2021/05/06 06:26 更新


 メーカー系商社はオリジナル素材や生産背景を生かしクラウドファンディング(CF)の提案で差別化をしている。

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(繊研新聞本紙21年3月12日付)

■試験を繰り返して

 「クラウドファンディングはニューノーマルなビジネスモデル。コロナ禍で一気に加速した」と指摘するのは東レインターナショナル(TI)。同社は昨年7月、オリジナルブランド「トレイン」でプロ仕様でありながらタウンユースも可能なオールラウンド型の高機能レインウェアのフィッシャーマンコートをCFの「マクアケ」で募集し、人気となった。

 製品ブランドであるトレインは18年に発売した。きっかけは、同社でスポーツアパレル向けOEM(相手先ブランドによる生産)を担うアパレル製品第2部が東レ本体などと連携し、15年からスタートした〝高耐候性レインウェアプロジェクト〟にある。人工的に作った高温多湿の環境で繰り返し試験し高性能化を図った。製造については東レグループの高機能素材や、ベトナム拠点縫製工場を活用した一貫生産の強みを発揮する。トレインは海外でも高い評価を得ており、米国でハンティングウェアを主力商品として製造・販売し、成長著しいEC発のメーカー「クイユ」などでも採用されている。

 CFのメリットとしてTIは「従来のOEMでは相手先ブランドが設定する製品価格に合わせた物作りを優先する。しかし、CFを活用することで、メーカー系商社として徹底的にハイスペックな製品を市場に直接提案できる。人材育成面では若手社員のモチベーションアップにもつながる」(五十嵐昭孝アパレル製品第2部長)としている。また、CFを通じて市場で評価を得られなかった場合でも「改善点をOEMに生かせる。ブランド価値を高めながら、CFはあくまでメインビジネスにつなげることが最終目的だ」という。

 次回のCFは3月下旬を予定しており、アスレジャー用途のフーデッドパーカとイージーパンツを出す。将来的には製品に使用する基布のリサイクル素材化や植物由来化、生地に付与する膜も植物由来原料を使用するなどして、環境対応型製品の開発を強化する方針だ。

東レインターナショナルは高機能レインウェアのフィッシャーマンコートを出品

■環境対応型で人気

 ユニチカトレーディングは、オリジナルタオル「洗うたびにふんわり・ふっくら。包まれる幸せがどんどん増えるふわもちタオル」をCFで4月16日まで募っている。フェイスタオル2000円、バスタオル4500円などを販売し、すでに応援購入目標総額を超える人気となっている。同タオルは綿とPLA(ポリ乳酸)「テラマック」を撚糸し、染色工程でPLAを取り除くことで無撚糸風にソフトに仕上げた。100%オーガニックコットンのふっくらした風合いが特徴で、吸水力は従来品に比べて約2倍あり、洗うたびに糸の膨らみが増す。テラマックは100%植物由来で生分解性を持つ。染色時の熱水で乳酸などに加水分解され、最終的に水と二酸化炭素になる。廃水処理を適切に行い有害物質の流出を防ぎ、環境負荷を抑える。

 ユニチカトレーディングはこれまでも、吸放湿性に優れたリヨセル「シルフ」を使用した〝快適毛布〟のCFでも成果を上げている。同社は「CFは製品ニーズがつかめ、これをBtoB(企業間取引)にも生かせる」(細田雅弘社長)と手応えを感じている。

 CFは商品に対する良さを最終消費市場に直接問うことができる。この新たな手法は消費者と一緒に製品を作りあげ、無駄な物作りを抑えるプロセスを構築できるだけでなく、最終的にサステイナブル(持続可能)な産業構造実現に資するものとなる。

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