富田興業のレザープロジェクト 多様な搾りかす再活用

2020/06/29 06:29 更新


 大手皮革卸の富田興業は今月、植物由来の副産物を再活用するレザー「レッザボタニカ」を立ち上げ、様々な企業と協業するレッザボタニカプロジェクトを本格的にスタートした。食品加工や製造現場で生じるポマース(絞りかす)を皮のなめしと染色に利用し、国内で持続可能な物作りを目指す。メーカーや小売店とも連携し、循環経済への貢献を強みに、消費の活性化につなげていく。

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 着目したのは、役目を終えて産業廃棄物として処分されるポマースに、植物タンニンなめしに活用できるポリフェノールが豊富に含まれている点。「飲食物の副産物と食肉の副産物の皮を掛け合わせる、サステイナブル(持続可能な)な革作りに、皆で取り組んで価値を高めていきたい」(富田常一社長)として、全国の生産者とのプロジェクトに発展させていく。

 第1弾として、21年春夏に向け、長野県のワイナリー1社にワインポマースを提供してもらい、「レッザボタニカビーノ」を作った。なめしと染色の両方に利用でき、力強くしなやかで、深みのある色に染まった。消臭・抗菌の効果もあるという。牛革で1デシ(10×10センチ)当たりの価格は約95円。第2弾は、飲料メーカーの協力を得た茶殻、コーヒーの焙煎(ばいせん)所によるコーヒーの豆かすでの取り組みが進んでいる。ほかにも、料理店の廃油、レモンの皮、渋柿の皮など多様なポマースがあり、「それぞれに個性のある色が存在する。将来は47都道府県の生産者と特徴ある革を作っていければ」という。国内生産は、牛革2社、ピッグスキン1社のタンナーに依頼している。

 製品化に向けては、価値を共有できるメーカーや小売店とパートナーシップを組んで供給する。カテゴリーごとに限定した企業数社とエンドユーザーに響く商品企画に取り組み、ブランドを育てていく考えだ。

ワインポマースや米油のもみ殻を使ったなめし革も(21年春夏展)


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