シンクスドットデザイン(東京、澤柳直志社長)は昨年3月に発売した〝土に返る服〟を、販売型からレンタル型のサブスクリプション(定額利用)モデルに切り替える。利用負担の少ない月額980円(税込み)で会員拡大を狙い、目指す循環型経済の成功事例作りに挑む。6月15日にサービスを始め、サステイナブル(持続可能)な消費に関心のある層にアピールする。
(永松浩介)
20年3月に発売したが、Tシャツで2万円近くするなど一般に広げるには高かった。使用する和紙糸「キュアテックス・ヤーン」は安くなく、先々回収した服を土に返すなどの管理コストも見込まれるため価格を抑えるのは難しい。売り切りだと最終的な商品の行き先に責任を持てないことも、自前回収するレンタル型に切り替えた背景にある。
「シンクスドットアース」と名付けたサービスで使用する商品は和紙と有機栽培綿のTシャツ各2型(3サイズ)から始める。うまくいけばパーカなどアイテムも増やす。基本は12カ月の契約で、13カ月目以降は支払いは発生せず着用し続けられる。ボディーはヘビーウェイトなので長持ちするが、破れやシミが発生した場合は有料でのお直しも受け付ける。契約期間中はサイズ交換も可能だ。
着古して不用になった服は回収して契約農家に送り耕作地の土壌改良に役立てる。使用する和紙糸は土に返る過程で微生物を増やすことがわかっている。サービスが軌道に乗れば、契約農家の野菜を使ったレストランの食事券の提供なども考えていると言う。また、利用期間に応じてポイントを付与し、長く着続ける方がメリットが大きくなるようなサービスメニューにしていく。
代表の澤柳さんは、「1年間しっかり着続けてくれる人が多ければ3年ぐらいで利益が出せるのでは」としている。それまでの事業成長を支えるための資金調達も行った。
家族など複数単位での利用にも期待している。管理コストを下げる目的で、ユーザーに農作業の手伝いを一部委ねることも考えているという。「体験に対する興味は高まっており、実現すれば双方にメリットがある」。サブスクリプションモデルの肝となるのがコミュニティー作りと考えており、農作業の手伝いもその一環。サービス開始後に都内での試着会も考えており、ユーザー巻き込み型でLTV(顧客生涯価値)の拡大を狙う。