個店で周年企画が活発 イベント開催や別注品を販売

2019/11/02 06:29 更新


【専門店】個店で周年記念企画が活発 イベント開催や別注品を販売 会社や店の個性を発信、新規客の獲得も

 ファッション企業で創業や開店の周年を記念した行事の開催が活発化している。大手企業に劣らない、ユニークで魅力的なイベントを実施する個店も増えつつある。いわゆる〝コト提案・コト消費〟としての施策の一つだが、自社・自店の個性や特徴を改めて認知してもらったり、新規客獲得の効果が見込める。地方に店を構えていたり、規模が小さいからこそ、発信力が重要だ。

◆神戸のメリケンヘッドクォーターズが創業20周年 クルーズパーティー開く

自社事業のジビエ料理の振興も

 神戸・元町を拠点にセレクトショップ3店を運営するメリケンヘッドクォーターズは創業20周年を記念し、クルーズイベントを開いた。神戸の中央堤から出港する貸し切りの遊覧船に常連客ら350人が乗り込んだ。セレクトショップ事業とともに、同社の柱事業である兵庫県の農・林業への有害鳥獣問題解決を目指し、処分される野生のニホンジカの革や肉などの副産物を有効活用する衣・食業態のプロジェクトの認知度を高めるため、自家製のジビエ料理も振る舞った。

遊覧船を貸し切り、350人が参加したクルーズイベント

 イベント参加者のうち約60人を小さな子供たちが占める。ベビーカーを押すファミリーでの参加も多く、アットホームな雰囲気だ。20年来の常連客から若い男女まで3世代と幅広い客層に店の歴史が感じられる。サルサバンドの演奏でスタッフも顧客もみんな楽しく踊り続けた。パーティーの冒頭には鹿の事業で連携している兵庫県環境部長もあいさつに立った。食事は鹿肉のローストや鹿肉カツサンドなど自社のスタッフが用意したジビエ料理。ここで初めてジビエ料理に触れ、害獣問題を知るきっかけにもなる。「これまでリアル店でつながってきた顧客は自分たちの応援団。これから自社の事業を若い世代にも継承していきたい」と入舩郁也社長。

サルサバンドの演奏で楽しく踊る

 同社はベーシックなメンズカジュアルウェアを軸とした「ハウディードゥーディー」に始まり、レディスの「ハイカラ」、オリジナル「ボガボガループライン」「ボガボガマリネッラ」などが中心の「ハイカラブルバード」(三宮)で構成する。さらに飲食事業として、自社で運営する鹿肉専門レストラン「鹿鳴茶流・入舩」、ドイツビール中心の「G・G・C」もある。

 当初からスタッフと顧客が交流できるイベントにも力を入れてきた。毎年、大掛かりな周年イベントは欠かさない。そのほかにも、毎月1回、鹿肉切り口のイベントを開いているほか、ボウリング大会、フットサル大会、映画館を貸し切った名画上映会、音楽ライブなどを定期的に開催している。

入舩郁也社長・祐子夫妻

◆東京・北千住のアマノジャク開店1周年 別注商品の受注会を開催

意志乗せ店の特徴を発信

 東京・北千住のメンズ・レディスセレクトショップ「アマノジャク」は8月の約1週間、開店1周年を記念した別注商品の受注会を行った。会期初日の夜には、食事や飲み物を振る舞い、音楽ライブも実施する無料のパーティーも店で開催した。パーティーには常連客中心に約30人が参加。3ブランドに別注した計5型の商品は、会期中に店頭とオンラインストアで完売した。

 購買層は20、30代が中心で、常連客のみならず、休眠客や新規客にも訴求効果があったという。

 取引先や顧客に感謝を伝えると同時に、「店としてのメッセージを発信したい」(大津寿成バイヤー兼ECディビジョンディレクター)という考えから、取り扱いブランドの一部と別注品を企画・販売することにした。

 単に各ブランドに別注するのではなく、3ブランドに共通したテーマを設定。モードでドレッシーな商品を多く揃える店の特徴を踏まえ、各商品に高級生地を使うことにした。ブランドの既存商品の色や生地を変えるだけでなく、新たに型から起こした商品もあった。「店の意志を反映した商品でお客様を驚かせ、喜んでいただきたかった」という。

店は2層で総売り場面積は約53平方メートル。2階に別注品を展示し、受注会を開いた

 メンズパンツブランド「ニート」では、ラクダの毛100%のトラウザー2型(ともに5万円)を販売。50本が初日に完売した。人気ブランドのため、常連客に限らず、SNSやブログで発信した受注会の情報を入手した一見客も多く訪れ、初日は正午の開店時に30人程度が行列を作ったという。

 「ミロック」では、新しい型を作り、生地工場が独自開発した綿100%の布帛を使用したタートルネックシャツ(3万円)を販売した。18~19年秋冬デビューのユニセックスブランド「アタ」では、シルク・ウール混のコート(7万円)、アノラック(6万3000円)を販売した。

 「周年イベントは1年を振り返る機会にもなる。ビジネスライクな試みでなく、社員全員がワクワクできることを今後もやっていきたい」とする。

顧客の一人をモデルとして起用し、各別注商品でビジュアル画像も撮影した(「アタ」のコート)

(繊研新聞本紙19年9月19日付)



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