ソニーは、独自開発した多孔質炭素材料「トリポーラス」をグループ会社の作業用ユニフォーム向けに提供した。同社は今後、一般衣料品や各種ユニフォーム用途で販路の開拓を強化する方針で、「実際に着用してもらう中で届く意見を改良・開発に生かしたい」という。
(小堀真嗣)
トリポーラスは、稲の籾殻(もみがら)から開発した環境配慮型の多孔質炭素材料で、従来の活性炭を上回る吸着性能が特徴だ。汚染物質を除去する浄化フィルターや、トイレタリーなど幅広く用途開発を進めている。
繊維・アパレル分野では、ミツヤコーポレーション(大阪府堺市)など繊維関連企業と協力し、トリポーラスの粉末をわたの段階で加工したレーヨンの紡績糸「トリポーラスファイバー」を使った生地を開発している。
トリポーラスをユニフォームに採用したのは、ソニーの特例子会社で清掃をはじめとするオフィス環境整備業務などを担う、ソニー希望・光(東京)。ソニーの本社(東京・品川)や、東京・大崎、神奈川県厚木市にあるオフィスで清掃を担当する45人が8月20日からユニフォームの着用を始めた。
製品は半袖のポケット付きTシャツ。オフィス環境になじむようカジュアルなデザインにした。トリポーラスファイバーとポリエステルの混紡糸を使った薄手の丸編みで、吸汗速乾性と消臭性に優れ、適度な伸縮性を備える。
オフィス内とはいえ、夏は冷房の効きが不十分な場所での作業も少なくない。そのため、夏の作業は特に過酷だった上、これまではインナーウェアにポロシャツを重ねて着用し、「汗が乾きにくく、動きにくいものだった」(清掃スタッフ)という。
「清掃スタッフの汗や匂いを気にするソニー社員の声も届いていた」と大庭薫ソニー希望・光社長。トリポーラスを使ったTシャツについて、清掃スタッフは「汗がすぐ乾くし、匂いが気にならない。Tシャツ1枚なので動きやすく、通気性も良いから気持ちが楽になった」と評判は上々だ。