コロナ禍による外出自粛の規制緩和が加速していることもあり、Z世代のおでかけに対するモチベーションも高まっています。およそ2年間で特に制限を受けていた旅行に関しても同様ですが、その捉え方には変化が起こっています。
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食べ歩きが最多に
19年にZ世代男女400人を対象に実施した調査では、男女ともに「旅行」がお金をかけていることの上位にランクインしており、彼らが体験を重視する実態の象徴ともとれる結果となりました。しかし、今回実施した調査では「食べ歩き」が最も高い数値となり、お金をかけていることは「旅行」から「食べ歩き」に置き換わっていることが分かりました。
しかし、Z世代が旅行に関心がなくなったわけではありません。もちろん、コロナ禍で旅行との接点が減ったことも影響していますが、生活の変化によって「旅行」がより身近になり、定義が変化したことが考えられます。
実際にインタビューで「あなたにとって旅行とは?」と聞いてみたところ、「非日常」という回答がある一方で、「宿泊すること」という回答や、都内近郊に住んでいるZ世代たちから「東京のホテルに泊まることも旅行」「今後旅行で行きたい場所は浅草」という発言が見られました。旅行と聞くと住んでいる場所から遠方に行くことをイメージしますが、彼らは近場に宿泊することも「旅行」と捉えていることが分かります。
適応能力を発揮
これはコロナ禍において「ホカンス(韓国発祥の『ホテル』で『バカンス』を楽しむ過ごし方)」や「ステイケーション(近場のホテルでの滞在を楽しむこと)」など、近場で非日常を楽しむ体験スタイルが普及したことが背景にあります。
適応能力の高さはZ世代の特徴ですが、その能力を発揮し、社会の変化に合わせて従来の旅行の代わりで楽しめる体験を生み出しました。これにより、旅行が非日常的なものから日常生活の延長にあるものに変化し、より身近な体験となったのです。
今後国内旅行を中心にZ世代の旅行需要の回復は予測されますが、遠方よりも近場の国内旅行に注目が集まっています。旅行の捉え方が変化したことで、旅行や宿泊先の決め手となる要素が変化する可能性も考えられます。
(繊研新聞本紙22年7月13日付)