メンズカジュアル主力のセレクトショップ「ロッポンギ」は、午後10時までという営業時間で、仕事帰りのサラリーマンを中心に根強い顧客を抱えている。東京メトロ半蔵門線住吉駅から徒歩約15分。下町エリアにほど近い店舗には、長年通う顧客に合わせた選(え)りすぐりのアイテムが並んでいる。
運営会社の六本木(佐藤潤一社長)の創業は千葉県・銚子市。店名の由来は、市場調査で訪れた六本木の街並みが気に入ったことだという。
先代の社長が、もともとはテーラーだった店を75年にジーンズショップへ業態転換した。同地で初めて「リーバイス」などのジーンズブランドを扱ったことで、すぐに地元で評判の店になった。
90年代初め、仕入れの拠点兼店舗という位置づけで東京に進出したのが、現在のロッポンギだ。当初は販売よりも仕入れ拠点の機能を重視していたので、繁華街から少し離れた場所での開店だった。
「住吉はベッドタウン。一般的な営業時間だと会社帰りの人がゆっくり見られないと思い、午後10時まで開けることにした」と佐藤社長。当時は深夜まで開いている洋服屋が少なかったこともあり、帰り道に立ち寄るサラリーマン客が次々と訪れ、リピートの来店率も高かった。
現在の客層は30~40代男性。その多くが顧客で、今も夜の時間帯の来店がメインだ。最近は江東区の再開発でマンションが増えたことから、ファミリー層も増え始めた。
扱う商品はリーバイスなどのジーンズブランドから「ザ・ノース・フェイス」などのアウトドア系ブランドまで幅広い。近年は顧客の年齢が上がっていることから、欧州のきれいめなテイストのブランドも増やしている。
売れ筋はオランダ発のブランド「スコッチ&ソーダ」。カジュアルなデザインながら、すっきりと大人っぽく着られるシルエットが受けている。「シュガーケーン」などこだわって作り込んだ国産ブランドのジーンズも人気だ。
佐藤社長は「顧客の顔を目に浮かべながら展示会を回る。大人の客が多いので、ベーシックなアイテムをセレクトしている」という。顧客の趣味やライフスタイルを把握した的確な仕入れによって消化率も高く、コロナ禍も乗り切れた。
今後は長年磨いた仕入れのセンスを強みに、EC販売も強化する計画だが、店舗の顧客第一主義は揺るがない。「プロの目線で選んだ服を通して、顧客にファッション文化を伝えていきたい。ロッポンギに行けば新しい服との新鮮な出会いがあると思ってもらうことが使命だ」(佐藤社長)と語る。