10月1日に消費税の税率が8%から10%へと引き上げられた。消費増税は14年4月に5%から引き上げられて以来、5年半ぶり。当初から、個人消費、特にファッションビジネスにとっては「駆け込み需要は少なく、反動減だけ」と懸念されていた。実際、増税以降は台風や例年より高い気温の影響も加わり、秋冬物の市況は厳しさを増した。増税に合わせて政府が始めた中小・小規模事業者向けの「キャッシュレス・ポイント還元事業」や、飲食料品などへの軽減税率による効果は一部にとどまっている。
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■増税前から影響懸念
国内のファッション市況は増税前から苦戦が続いていた。繊研新聞社が四半期ごとに行っている「ファッションビジネス景況・消費見通しアンケート調査」(10月1日付)によると、7~9月のファッション消費は台風や冷夏などの天候不順、インバウンド(訪日外国人)需要の減少、盛り上がりに欠けたセールなどで、4~6月より「悪化した」との回答が2割を占めた。増税前の駆け込み需要は高額品など一部にとどまり、10~12月の予想も6割が「悪くなる」と回答するなど、多くが「増税の影響」を懸念していた。
増税後の10月の反動減はやはり大きくなった。経済産業省「商業動態統計」の10月の小売業販売額は前年同月比7.1%減となり、3カ月ぶりの前年割れ。駆け込み需要の反動に加え、大きな被害をもたらした台風19号による影響が大きく、同省は10月の基調判断を前月の「増加している」から「一進一退」へと下方修正した。特に、百貨店は17.3%減(既存店ベース16.4%減)と落ち込み幅が大きくなった。また、百貨店とスーパーは衣料品の売れ行きが大幅に落ち込んだ。
これに対して、キャッシュレス・ポイント還元事業は登録加盟店数が約94万店、申請数が約97万店となる見込みだ。制度に登録したキャッシュレス決済額も11月25日までで約1兆9000億円、ポイント還元額は約780億円となり、キャッシュレス決済は広がりつつある。
■衣料品の苦戦続く
11月に入ってもファッション市況の厳しさは続いた。ファッション小売りは前年同月実績を下回る企業が大半を占めた。増税に加え、平年より気温が高かった影響で、防寒商品を中心に衣料品の苦戦が続いていること。また、訪日外国人観光客の減少も響いている。
大手百貨店は全店が前年を下回った。10月に比べると減少幅は縮小したが、衣料品や服飾雑貨は10%前後の落ち込みだ。専門店も気温が高かった影響でアウターなどの冬物の動きが鈍く、「無印良品」など一部を除いて前年実績を下回る企業が大半だった。
こうした経済状況もあり、政府は事業規模約26兆円の大型補正予算を決めた。景気の基調は「緩やかに回復している」(12月の月例経済報告)としているが、製造業は弱含みで、下支えが必要と判断。キャッシュレス・ポイント還元事業でも「当初予算では足りない」(経産省)と同事業に約1500億円を計上している。
