レナウンは15日に会見を開き、社長交代の理由を「現在、策定中の新しい中期経営計画は新しい体制の下で行うことが適当」(北畑稔社長執行役員)と説明した。
同社は23日の株主総会を経て、神保佳幸取締役上席執行役員が代表取締役社長執行役員に昇格、北畑稔代表取締役社長執行役員は代表権のない取締役会長に就く。公表がこの時期になった理由は「親会社である山東如意科技集団との丁寧な協議の結果」(北畑社長)とし「引責辞任ではない」と強調した。
(北川民夫)
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神保取締役は04年に経理部長、09年取締役、10年上席執行役員及び海外事業部長、12年に経営企画部長を歴任し、16年からは管理統括部長に就任。北畑社長は「神保取締役は経理・財務に豊富な知見を有するとともに、管理統括部門を担当するなかでリーダーシップを発揮している。レナウン全体の経営を担うに当たり課題の認識も十分にできており、スピード感をもって解決できると判断した。親会社である山東如意グループの経営者からの信任も厚い」と評した。神保取締役は今後の経営について「山東如意グループとの絆を深め、基幹ブランドに注力して業績を安定させる」と述べた。
同社の19年2月期連結業績は、売上高が前期比4.1%減の636億円、営業損益は25億円の赤字、経常損益は20億円の赤字、純損益は39億円の赤字だった。
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会見での一問一答は次のとおり。
――当面の経営課題、施策の重点は。
神保 まずは業績の安定化を図りたい。売り上げや粗利益はお客様からの支持の総和だと考える。売り上げの減少に歯止めをかけて利益が残る体質に転換する。基幹ブランドである「ダーバン」「アクアスキュータム」「アーノルドパーマータイムレス」などの成長を促進し、ソリューション戦略事業の「シンプルライフ」の効率化と収益力向上を目指す。
――今回の人事は山東如意グループからの要請があったのか。
北畑 山東如意との友好的で丁寧な協議を行った結果、今後の新しい中期経営戦略については新しい体制の下で具体化し、推進することを決めた。親会社からの一方的な要請ではない。両社の協議のなかで①山東如意とレナウンはファミリーである②山東如意は今後も変わらぬサポートを行う③レナウンは新しい体制で更なる発展を遂げグローバル化を推進する、などが話された。今回の人事についてもこの協議が根底にある。業績に対する引責辞任というものではない。
――業績が安定しない要因は。
神保 業績不振の根本的な理由は変化が激しい市場に対応できていないことが大きい。課題としては、国内の百貨店チャネルの構成比が高いことや、ヤングやアダルト層向けが欠落したブランドポートフォリオの偏り。レディス分野の弱体化などを挙げることができる。
――この間の経営を総括すると。
北畑 山東如意との連携によって、物流改革や三国間貿易、アクアスキュータム・ブランド事業の再構築を図るなどして、当社の中長期的な経営に寄与する変化を推進してきた。一方で物作りや商品企画で保守的な選択をして新規性が不足していた。販売の現場のモチベーション向上に向けた施策も必要になっている。
――新社長としての決意は。
神保 社内に〝負け癖〟の意識がついてきているが、これを変えたい。熱意を持って仕事に取り組む姿勢を全社に広げる。また、当社の強みである、自社ブランドの市場での高い認知度や、長年の間に培ってきた品質への安心感、更なる山東如意との提携などを生かして今後の経営に当たる。