2月11日に始まるプルミエール・ヴィジョン(PV)パリでは、約20の卓越したアトリエや職人が唯一無二の技を披露する「メゾン・デクセプション/卓越したメゾン」(MEX)が、ラグジュアリーを中心とした企業から注目を集めている。MEXで、日本の存在感は大きい。PVファッションディレクター補佐のアリアンヌ・ビゴ氏に、日本の「サヴォワールフェール」(匠〈たくみ〉の技)とそのクリエイティブかつ持続可能なファッションへの影響について聞いた。
(パリ=松井孝予通信員)
【関連記事】PVフロランス・ルッソンCEOに聞く、2月展の見どころ サヴォワールフェールを核に進化
先駆的な役割果たす
日本のテキスタイル産業は、テクノロジーと職人技の融合という点で、最も象徴的な存在の一つです。
長い歴史の中で革新的な繊維開発をリードし、キュプラの発明に始まり、近年ではスパイバーによるバイオ技術を活用した持続可能な繊維が注目を集めています。
日本企業はバイオ由来の新素材にも力を入れており、バイオワークスは「プラックス」の分野で先駆的な役割を果たしています。これらの技術革新は、ファッション業界に新たな可能性をもたらしています。
日本の職人たちは、代々受け継がれた技法を磨きながら、繊細で高度な技術を守り続けています。特に絞り染めは、世界のテキスタイル文化にも影響を与えており、例えばアフリカのタイ&ダイの技術も、日本の技法にルーツを持つと言われています。このように、日本の職人技は単なる伝統の保持にとどまらず、世界各地の繊維文化に影響を与え、新たな創造の可能性を広げる役割を果たしています。
日本の織物や編み物は、見た目には分かりにくい繊細な質感や手触りが特徴です。ドライでシャープな感触、しなやかで弾力のあるタッチ、軽やかさと密度のバランスが絶妙に計算された「手」(ハンド)の美学があります。
上質さを誇示しない美
また、日本の職人技は「さりげないラグジュアリー」を体現しています。クラフトマンシップに裏打ちされた品質の高さがありながら、一見するとシンプルで自然なたたずまいを持ちます。この「上質さを誇示しない美意識」こそ、日本のテキスタイルの魅力といえるでしょう。
今回も、日本ならではの繊細な表現や技術が、どのように革新性と融合するかに注目しています。伝統を尊重しながらも、新たな解釈や技術を取り入れた素材やプロセスが、どのように進化するのか期待しています。