【関連記事】24~25年秋冬パリ・メンズファッションウィーク 手仕事の技を盛り込んだ静かな服
24~25年秋冬パリ・メンズファッションウィークの大トリとなった「GmbH」。ランウェーはデザイナーデュオ、ベンジャミン・A・ヒュズビーとセルハト・イシックによるスピーチから始まった。
10分間のスピーチで、世界中で巻き起こるナショナリズムの高まりへの危機感を涙交じりに訴えた。イスラム系移民の子孫としての9.11以降の難しい立場、現在のパレスチナへの思い。彼らが拠点とするドイツで起こっているイスラム系やユダヤ系、有色人種のアーティスト・ミュージシャンの活動へのキャンセルについて語った。
新作では、イスラム世界のアイデンティティーであるシュマグが、テーラードジャケットになった。フーディーには、ナショナリズムに対抗する方法として国連の力を信じたいとの思いがプリントされていた。
「世界や人々が少しでも回復してくれれば」とバックステージで目に涙を浮かべた「ダブレット」の井野将之、地球に極力負担がかからないようにと少ない予算で頑張る若手たち。一方で、「どのセレブがショーに来たか」「彼らが何を着ていたか」ばかりが話題になり、メインストリームでは服の話すら出ない。超高級化や価格の高騰、そして深まる貧富の差。かつてファッションはもう少し誰もが楽しめるものだった。消費者は浮世離れしていくこの業界に、いつまで興味を持ち続けてくれるのだろうか。
(ライター・益井祐)