■デイトナ・インターナショナル 顧客接点を「建て付け」
前期(18年2月期)にEC売り上げを70%超伸ばした「フリークスストア」を展開するデイトナ・インターナショナル。サイト、商品画像、在庫などユーザーとの接点を地道に改善し、実店舗では、来店客の課題解決につなげて、全社を活性化させる効果ももたらしている。小林昌樹Eコマース部部長に聞いた。
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望まれる価値探る
今は売り上げ規模拡大に注力している。ECで売れれば注目も認知も高まるからだ。全社売り上げに占めるEC比率が40%に高まったのも、伸ばすだけ伸ばしたため。比率に大きな意味はなく、並行して店舗売り上げが伸びているかを重視している。
ECは「集客・モチベーション・仕組み」を先行して構築しやすい。人数が少ない部署なので、目標と行動の意思統一が速くできる。一方、店舗まで行きわたるには、時間も人手もかかる。ECから先行し、ここにきて店の集客も増え、スタッフが来店客と会話し、課題解決につなげている。店で売れるとスタッフ間で「なぜ売れているの」という会話に発展し、全社活性化につながっていく。
70%の伸びは、在庫、画像、商品説明、サイトユーザーインターフェイス・ユーザーエクスペリエンス、買いやすさなど、地道にクオリティーを上げてきたから。魔法はなく、実店舗同様に点検とミーティングを繰り返した。特にみんなに考えてもらうことが重要で、当事者意識を持ってもらい、客が望む価値は何かを探り、それに対して、最短距離での解決を目指すことが大事だ。その点で、ECで取得できるデータはすべての判断基準であり、客へのフォーカスに直結する。
社内でのEC部署の位置づけも重要。EC部署が他部署に対して弱いと結果は出せない。強い人材をECに配置し、多くの部署を動かすこと、周りに乗っかってもらうことが大事だ。
集客は、店舗からの呼び込みが軸。当社はフリークスストア1業態なので、選ぶ楽しみではなく、店舗の顧客に商品・人・コンテンツをもっと見に来てもらって、よりファンになってもらい、エンゲージを深めている。

システムを見直し
新規客ではゾゾタウンからの流入が店、直営ECともにあって、実店舗への貢献度は高い。良い商品が適切に目に触れると、深堀りされる。最初の接点を構え、加えてコンテンツを店でも、自社メディアである直営ECでも見せる準備をしておくといった「接点の建て付け」で伸びが変わる。
在庫と顧客の一元化は完了し、自社EC物流を外注するなど、システム的なところも順次見直している。ICタグ導入も検討中だ。
次へのステップは「居心地の良い、便利なサービスのある店」へ。EC、店という垣根なく、純粋に便利で、スタッフとの会話がスムーズで楽しいことが気持ちよい店につながる。どの接点からの流入でもエンゲージが高められるよう、新たなテクノロジー導入を検討していきたい。一方で先の読めない時代でもあるので、いかに身軽に、最短距離で収益性の高い企業基盤を作れるかも課題となる。
(繊研新聞本紙 2018年11月2日付)