カジュアル製品のOEM(相手先ブランドによる生産)、洗い加工大手の西江デニム(岡山県井原市)は、水の完全リサイクルを実現した国内工場を軸に、海外生産でもサステイナブル(持続可能)な製品を求める顧客への対応を23年春夏物から本格化する。
同社は、日本、中国・上海エリア、ベトナム、カンボジアで生産している。昨年から今年、コロナ禍で上海エリアなど海外の生産が厳しかった。そこで、サプライチェーンの軸である日本で20年12月に本格稼働した水の完全リサイクル濾過(ろか)処理施設を背景に、サステイナブル製品対応を本格化している。「コロナ禍、円安になり国内生産の要望が急増」(西江眞社長)し、同社の国内工場はフル稼働状態だ。
同社は90年代には月間50万本を生産・加工していた。しかし、現在は海外生産が中心となり国内では月産4万本ほどだ。60年代当時の活性汚泥法浄化処理施設はそのまま残っていた。これを改修し水の完全リサイクル濾過処理施設に変え、20年12月に稼働した。完全(100%)リサイクル達成のため、乾燥で蒸発する使用水以上の雨水を回収している。
また、OEMでもサステイナブルな商品から低価格商品までニーズは様々なため、「為替、海外工場の工賃、生地、付属品、加工の種類、関税や物流コストなどマトリックス上で品質と価格のベストな組み合わせの提案を強化する」考えだ。使用する生地は国産が約65%、中国製約35%。特に「サステイナブルな加工、国産のサステイナブル生地への引き合いは増えている」ため、国産生地などの縫製基地への輸出も増えている。
加工では抗菌抗ウイルス加工が基本装備となりつつあり、家庭での洗濯回数を減らすサステイナブル製品へのニーズ、生地の柔らかさを損なわない防汚、消臭、透湿加工など高い機能性を求める方向にも広がっている。
西江社長は今後も、「ドクターデニムホンザワの本澤裕治さんとの取り組みは付加価値創造のため引き続き強める」考え。また、洗い加工に対し「近々、値上げの可能性は高い。染料や薬品は1.5倍、工賃、電気・重油など上がっているため」としている。