名古屋が今、面白い! 新たな文化やブランド、デザイン

2020/01/05 06:29 更新


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【名古屋ニューウェーブ】新たな文化やブランド、デザインを発信

 東京、大阪に次ぐ人口と経済圏の規模が特徴の名古屋圏。新しい文化やブランド、店舗、企業を生み出す土壌としては、その発信力は弱いとされてきた。しかしここにきて名古屋で独自の活動を行っている人たちが増えてきた。中心をなしているのは30代を軸にした若い世代だ。今回の名古屋ニューウェーブ第2弾は、30代を中心とした若手世代のクリエーター、ライフスタイルショップ、ブランドの動きを紹介する。

(浅岡達夫)

◆ビガ

ブルキナファソ伝統生地「パーニュ」を紹介

鮮やかな色合いと柄が特徴のパーニュのワンピース

 アフリカ・ブルキナファソなど西アフリカ伝統の生地「パーニュ」を使った洋服やバッグ、小物雑貨を企画・製造、販売しているのがビガ(BIGA、愛知県半田市、間瀬由理代表)。

 エスティシャンや木製輸入おもちゃ店などを営んできた間瀬代表がビガを創業したきっかけは、ブルキナファソ人と結婚した高校同級生の存在。そこから西アフリカの伝統生地「パーニュ」を知り、その色合いの鮮やかさや大柄のプリント、素朴な素材感を新鮮に感じた。パーニュはもともとオランダの生地メーカー、フリスコがアフリカ人向けに輸出したろうけつ染め生地。それが女性の手作り衣服向け生地を表す一般名称としてアフリカ北部全般に定着した。「西洋化と経済発展によって着る人が少なくなり、生活文化として残っているのはブルキナファソだけになった」(間瀬代表)。

間瀬代表(左)と企画生産を担当する酒向さん

 当初はパーニュ生地を輸入して各地の催事で販売した。「ビガ」ブランドとして洋服やバッグ、小物雑貨まで扱うようになったのは、友人の先輩でテキスタイルやアパレル業界での経験がある酒向早苗さんが参加してから。その後は主婦のネットワークの応援も得て、商いが拡大してきた。

 事業としての軌道に乗ったきっかけになったのが、百貨店のポップアップ店舗や著名ライフスタイル専門店で取り上げられたこと。年に1回ブルキナファソを訪ねて、パーニュを買い付けている。最近では手仕事による買い物かご「ボルガバスケット」など西アフリカ特産の商品も販売し始めた。

 将来的には「ブルキナファソの綿花を輸入して、糸作りから生地・製品化までを日本で行えるような仕組みにしたい」ともする。

◆ノード

キッチンウェアや皿、雑貨など販売

テーブルウェアやキッチンウェアを充実

 テーブルやキッチン周りなどの生活全般の商品をセレクトして販売しているセレクトショップ「ノード」(NODE)。

 空間デザインの事務所「タスワークス」(TASWORKS)と併せて、17年6月に名古屋市本山の閑静な住宅街に開店した。

 87平方メートルの店内には簡単な厨房施設があり、来店者に本格的なコーヒーを振る舞う。「コーヒーを入れる器を見てもらいたい事に加え、座ってゆっくり店内を見渡して欲しいという狙いがある」と古屋智英代表。コーヒーカップや皿、花瓶、照明器具などのテーブルウェアやキッチンウェア、アパレル製品や雑貨などを品揃えしている。機械メンテナンスの経験を生かした真鍮(しんちゅう)製品や照明器具「エヌ」(N.)などオリジナル商品も始めた。

ノードとタスワークス代表の古屋さん

 店内には常設展示スペースを設け、クリエイターやデザイナーのイベントを開いている。インスタグラムやフェイスブックなどのSNS経由やイベントをきっかけに来店する人が多い。空間デザインの施行例なども紹介しているSNSで興味を持って来店する人も多い。

 古屋代表はコンテナや海運向けの機械修理・メンテナンスの会社に勤務しながら、空間デザインの仕事も行ってきた。

 今秋からは東京のアパレルメーカー、ユニバーサルティッシュが直営店と卸売りで展開しているブランド「ユニバーサルティッシュ」「ティッシュ」の扱いを始める。

 さらに職人芸を持つ日本の作家との協業によるオリジナルな容器や照明器具なども揃えていきたいとしている。

◆フルリ

ブーケやリースなどドライフラワー専門

フルリの代表的な商品であるリース

 ドライフラワーのカテゴリーで独自のデザインの商品を制作・販売しているドライフラワーアーティストが大渕智美さん。出身地の愛知県春日井市に工房を設け、「フルリ」(FLEURI)ブランドを販売している。

 ファッション専門学校卒後にアパレルメーカーなどの事務職を経験してきた大渕さんが、仕事をやりながらデザインしてきたのが手作りのアクセサリー類。その大渕さんが出合ったのがドライフラワーの世界。「生花を乾燥させた後の色や質感を考えて作ったドライフラワーには、生花と違った価値がある。生花と兼業でドライフラワーを制作するアーティストが多い中で、ドライフラワー専門で活動ができないか」とフルリを立ち上げた。

 門前市や朝市などのイベントに店舗を設けて販売を始めたのは11年。当初はアクセサリーと兼業だったが、人気店舗になってきたのを契機にして、ドライフラワー専門のアーティストになった。工房は今年3月に設けたばかり。ブースやリースや小物などをデザインし販売。フラワー専門誌でも取り上げられた。

 「ドライフラワーは乾燥した花なので、1年間程度は持つ。また四季それぞれの花を組み合わせることが可能で、季節感も味わえる。そんな生活用品として楽しんでもらえたら」と大渕さん。

大渕さん

 「ドライフラワーは欧米にも存在するが、日本のドライフラワー業界が世界ナンバーワンだと思う。アジア圏を見ても韓国や中国などにはドライフラワーの文化がない。この日本独特のドライフラワー文化をもっと広めたい」と強調する。

◆ヤンガオ

タイ北部カレーとTシャツ、雑貨扱う

店内中央部にはタイ関連のTシャツやグッズを品揃え

 名古屋市西区浄心にあるタイカレーの店「ヤンガオ」はちょっと変わった店だ。店主はグラフィックデザイナー出身の村松和昌氏。音楽好きな村松さんはカレー店にDJブースも設け、音楽イベントも行う。店舗の真ん中にあるテーブル周りにはキャップやキーホルダー、ワッペン、Tシャツなどのオリジナルデザインの商品を販売している。村松さんがデザインしたロングTシャツは開店以来、店頭とウエブサイトも合わせて1000枚を売り上げた。

 またタイのレコードやグッズも販売している。カレーを食べるスペースは半分くらいだ。しかしタイカレーは「本格的だ」と数多くの雑誌やブログ、SNSで評判で、店舗はいつも満員。あちらこちらのイベントや市場に出した店舗も人気だ。

 村松氏は名古屋出身、岐阜県多治見市育ち。芸大卒後にデザイン事務所や印刷会社、デザインオフィスに勤務。そのデザインオフィスがタイ・バンコクに事務所を設けることになり、その駐在員として赴任。その後7年間をタイで生活した。タイ時代に出会ったのが、北部チェンマイで作られているスパイスが利いたゲーンハンレーカレー。

村松代表

 家庭の事情で名古屋に戻ったときに「このゲーンハンレーカレーを自己流にアレンジして出すカレースタンドをやりたい」と独立。「そのカレーとタイの文化を伝えたい」と考え、18年4月にヤンガオをオープンした。

 「どちらにしてもカレーは誰もが好きな大衆的な料理。その中でもタイのゲーンハンレーカレーはスパイスの切り口でタイを感じる。カレー・プラス・タイカルチャーによる新しい店舗を今後も発信していきたい」とする。

◆モクモシストア

工業的デザインを生活必需品に導入

工業デザインの機能美、使い勝手を提案

 店舗・住宅向けの建築設計から施工、オーダー家具の製作などを行う事務所「モクモシ」を営むかたわらで、シンプル・機能美、使いやすさなどをコンセプトにしたライフスタイル型セレクトショップ「モクモシストア」を名古屋市名東区で営業している。

 神田大資代表は三重県長島町出身の32歳。大工や左官、塗装などの建築関係の作業を多能工的に行う職人を、建築会社で10年ほど務めてきた。その後友人と共同で会社を立ち上げ、その会社の内装・リフォーム部門を担当した。そして14年にモクモシを設立。昨年6月にはモクモシストアをオープンした。

 「店舗や住居のリフォーム、イノベーションでは〝古いものを残して生かす〟を心がけている」と神田代表。また「工業的なデザインはシンプルだが機能美や使い勝手で優れているものが多い」ともする。

神田代表

 こうしたコンセプトを理解してもらう「建築の入り口」を毛一つの役割として、モクモシストアをオープンした。

 60平方メートルの同店には、企業や工場で使用するために耐久性や機能性、材料を考えて開発された家具や椅子、照明器具や工具などの道具、小物などが並ぶ。ほとんどが「家庭でライフグッズとして使えるスペックのものを選んで品揃えしている」。

 「生活に必要なグッズとして、工業的にデザインされたものには独特の機能美、使いやすさがある。耐久性などで過度なスペックがないものを今後も選びたい。また照明器具などでオリジナルなデザインによる商品を開発して販売したい」ともする。

◆マチダタケル

イラストとグッツ、世界に向けて発信

アイコンの目が特徴的なマチダタケルのデザイン

 イラストレーションに際立ったキャラクターを加えて統一感を表現し、自らを「イラストレーション・アーティスト」と強調するのはマチダタケル氏。86年に静岡県浜松市で生まれ、名古屋の大学を卒業。グラフィックデザイナーとして複数のデザイン事務所で勤務。18年にフリーランサーのデザイナーとして独立。グラフィックデザインやイラストレーションを提供するかたわら、自らの企画によるグッズをイベントや展覧会などで販売している。

 特徴的なアイコンは「目」。このアイコンを挿入したイラストレーションが国内だけでなく香港など海外からも引き合いがある。

 活動の一つとして取り組んでいるのが「ライブ・ポートレート」。イベント会場で客の似顔絵を描くが、「これは単なる似顔絵ではない。目の部分をアイコンで統一している。「お客の顔の特徴をつかむ」が、アイコンを発信するイラストレーション作品の一つになっている。

 本業はグラフィックデザイン。「デザインの世界ではグラフィックとイラストが分かれているケースが多いが、この二つをワンストップで提供している」。

 また「プレイガール」「ラバー」「そろそろ夏も終わりガール」などと題したイラスト入りTシャツやトレーナー、スマホケース、ワッペン、ノートなどをウェブサイトで販売している。

 今後は「名古屋を拠点にして全世界を対象に仕事をし、発信していきたい」と語る。

このほど一宮のイベントで紹介した商品群

個に対応するリードマグネット・マーケティングに

クレート・アンド・マーケティング代表 小嶋秀雄氏に聞く


 アパレルや服飾雑貨、生活用品などファッションとライフスタイルの業界が大きく変わりつつある。消費行動の成熟化やサプライチェーン・小売りの変革が大きい。こうした中で30代など若い世代を中心として、新たな切り口で事業活動を起こすうねりが出てきた。名古屋を拠点にして商業施設や小売業のアドバイザーとして活動を行い、国内外のマーケット情報をA4判100頁にまとめて毎月「WHAT's  NEW」としてレポートを発刊している小嶋秀雄クレート・アンド・マーケティング代表に、これらの新しい動きを聞いた。

――マーケットの先端は「ハイブリッド型」と訴えているが。

 ライフスタイルやファッションなどの流通段階では、大型小売業やSPA(製造小売業)、セレクトショップらが複数の物販や飲食を加えた業態の複合化、つまりハイブリッド化によって生き残ろうとしています。

 しかし経営の効果を「1+1=2以上」にするあまり、このハイブリッド型が成功してはいません。異業種のプロ人材を集めて事業の組み立てを行っているのですが、全体を通したテーストやこだわった趣味性などを発揮できていないからです。これでは成熟した生活者の消費行動を満足させません。

――若手世代は新しい形でハイブリッド型を志向していると聞いたが。

 若い世代は良い意味でがつがつしていません。それは成熟社会で育ったからかもしれません。ハイブリッド業態を志向するのですが、「1+1=1.3」くらいの収益性でよいと考えます。無理をしませんし、彼らの趣味性を貫きます。コンセプトや品揃えには個性があります。このこだわりの厚みが、目が肥えた生活者に支持されているのではないでしょうか。

――生活者は個に分かれて趣味性を強め、多様性を深めているが。

 生活者の趣向は多様化しています。この時代にマスマーケティングは無理ではないでしょうか。SNSや口コミの情報発信で共感する人たちをひきつけるのが若い世代の方法論です。私はこれを顧客を磁石のように引き付けてマーケティングしている「リードマグネット・マーケティング」と呼んでいます。

(繊研新聞本紙19年11月1日付)


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