ニューヨーク・メトロポリタン美術館コスチューム・インスティチュートの「コスチューム・アート」展が、5月10日に始まった。衣装展の内容以外に、複数の点で話題を集めている。
(ニューヨーク=杉本佳子通信員)
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新時代迎える
まず、新設された1100平方メートル強のギャラリー「コンデナストギャラリー」の披露を兼ねた開催になったことだ。中には、「トム・ブラウンギャラリー」と「マイケル・コースギャラリー」もある。メトロポリタン美術館がコスチュームアート美術館を併合して80年が経った今年、コスチューム・インスティチュートが新時代を迎えた。
もう一つの話題は、アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾスとその妻、ローレン・サンチェス・ベゾスが最大の寄付者として、この展覧会と「メットガラ」を実現させたことだ。ベゾス夫妻が「メットガラを買った」形となり、富の不均衡に不満を持つ市民からの反発が強い。ニューヨークのゾーラン・マムダニ市長はそうした機運に配慮するかのように、早々にメットガラ欠席を表明した。
奇しくも1日に公開された映画『悪魔を着たプラダ2』は、富と権力をほしいままにするIT長者が恋人を喜ばせるためにファッションメディアを買収しようとしたストーリーを描いている。女優のサラ・ポールソンが1ドル札で目を覆ってメットガラのレッドカーペットに現れたのも、「金に目がくらんだ」ことを皮肉ったともとれる。メットガラへのアンチテーゼとして、ブルックリン図書館は、誰でも好きに着飾って無料で入れるイベント「ピープルズボール」をメットガラの前夜に開催した。
プレスプレビューで毎回スピーチをするコンデナストのグローバル最高コンテンツ責任者のアナ・ウィンターはこうした動きを意識してか異例の長いスピーチをした。その中で、「初めてメットガラに来たのはエルの編集者をしていた82年で、バーグドルフグッドマンでサンローランの900ドルのドレスを買った。当時の自分の家賃の数カ月分だった」と話した。まるで「私も普通の人」というかのように。そして、メットガラがニューヨークにもたらす経済効果にも触れた。
メットガラが特権階級の「お祭り騒ぎ」であることは確かだが、それがもたらす経済効果は無視できない。膨大な寄付金のおかげで展覧会が実現され、ニューヨーク市民は手軽な入場料で観られる恩恵があることも紛れもない事実である。
多様性を意識
賛否両論渦巻く中で幕を開けたコスチューム・アート展は、一言で言えば、「様々な美術品に見られる人体とファッションをひも付けた」展覧会だ。膨大な所蔵品の中から人体に関連した美術品を集め、それと服との関係性にメトロポリタン美術館が解釈を加える。同美術館ならでこそ成し得た構成だろう。
