スマートフォンの画面をポチッと押せば何でも買える時代。だからといって、趣味の漫画や小説をECで購入することはほとんどない。探している本はネットですぐに見つかるが、古本店でしか買わない。わざわざ店に行って本棚を探し、売っていなければ縁がなかったとその日はあきらめ、次の機会を待つ。
タイパ重視の若い世代からすると、そうした行動は信じられないだろう。古本店だけでなく、新品の書店も含めて膨大な本が並んでいる空間自体が好きなので、店に通うことは全く苦ではない。本との一期一会を楽しんでいる。
先月、ニュウマン高輪にオープンした「ポータークラシック」は、ハリウッド創成期のクラシックな映画館をテーマにした店舗空間が圧巻だ。店内装飾を映画美術監督の種田陽平氏と東宝映像美術チームが担い、細部のディテールまでこだわる。派手なファサードの下にある正面入り口にはチケットブースが設置され、店内にはフィルム時代の大型の映写機をはじめ2席だけのシアタールームまである。
コロナ後にECの売り上げが鈍化し、リアル店に回帰する流れは地方の個店でも強まっている。福島県郡山市のセレクトショップ、タイムアフタータイムは圧倒的な品揃えと巨大なテーマパークのような空間が強み。買い物の楽しさを改めて発見できるのは、リアルな場なのだろう。
