《めてみみ》目標の立て方

2025/09/03 06:24 更新NEW!


 「入賞を目指そうと思っていたら入賞はできない。それより一つ上の目標を設定しないとかなえられない」。日本代表として国際マラソン大会に出場した元プロアスリートに達成の秘訣(ひけつ)を聞くと、こう返ってきた。「初めから『そこそこ』の成績を目指していたら、そこそこの練習で満足してしまう。3位以上の高みを目指してこそ追い込む練習ができ、進化する。その結果ようやく入賞の成績を収められる」。

 この考えは腑(ふ)に落ちる。記者の学生時代を振り返っても、「今度の試験は10番以内でいいや」という目標で臨めば10番台になり、1位を目指して頑張ると1位は無理でも10位以内だった。

 一方、企業経営での目標設定はやや異なる。自分で目標を設定するのと違い、社員にとって目標は設定されるものという側面がある。躍進が続くある企業トップは、社員が少し頑張れば手が届く目標を常に設定し、着実に達成させ毎年少しずつ成長してきたという。自ら頂点を目指す社員もいれば、そうでない社員もいる。あまりに高い目標を立てれば、現実との隔たりに社員の心が折れてしまいかねない。

 その企業トップは「いつかは業界1位に」と秘めた闘志を燃やし続け、就任から10年で見事業界トップに立った。社員の個人差を理解しつつ、組織全体の力を高める。組織を束ねる難しさ、面白さがそこにはある。



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