3月期の中間決算が出揃ったタイミングで、担当する分野の主要企業を取材した。各社からよく聞かれたのは、インバウンド需要の急増に関すること。特に春から増加した中国人観光客によって販売が伸び、過去最高のインバウンド売り上げを記録する企業が目立った。
「当社はこれまで『円高銘柄』と言われていましたが、国内の直営店に中国人客が急増したことで、『円安銘柄』に変わりました」とは、知名度の高いブランド製品を製造・販売するメーカーの幹部。特に西日本でインバウンド売り上げの増加が目立ったことから、西日本で売り場新設や増床改装を積極化。土産となるような商品や割安効果の大きい定番品も手厚く揃え、下期商戦に臨んでいくという。
同社は、日本人客の売り上げが減少した分をインバウンド需要が補い、全体で増収を確保していた。ここまでその依存度が高まると、心配になるのはやはりカントリーリスクだ。
二国間の政治的関係の緊張・悪化や、テロ・紛争・疫病による国家間移動の制限、為替相場の変動などによって、ファッション業界は過去、何度も痛い目に遭ってきた。もちろん、インバウンド需要の急増を商機とするのは、企業活動として当然だ。だがその一方で、既存ビジネスの土台となる日本人顧客をないがしろにしないよう注意したい。