小学生の息子から言葉の意味を聞かれることが増えてきた。好奇心旺盛なのは良いことだが、毎度答えるのは大変だし分からないものもあるので最近は辞書を引くように勧めている。しかし、それはそれで子供が面倒なようでなかなか調べてくれない。結局、一緒に調べることになる。
三浦しをんさんが書いた小説『舟を編む』では、辞書を編さんする側にいる人たちのドラマが描かれている。生活をしながら用例を採集し、語釈(意味説明)をつける。「右」「北」「愛」…。ある言葉の意味を解釈する際、別の言葉でどう説明するか。読みながら登場人物と一緒に頭をひねる。
ファッションビジネスはもともと新しい言葉が次々と現れる産業だが、以前からよく聞く用語でも、実は所属する業界や会社、人によって解釈が分かれるものが多い。「マーチャンダイジング」(MD)は好例で、商品政策として使っている人もいれば、マーケティングまで含んだ意味と捉える人もいる。
ビジネスにとって大事なのは、社内で使われている用語が社員間で同じ理解をされていることのはず。先のMDも社内で共通言語になっていれば売り場の改善は進みやすくなるし、円滑なコミュニケーションにもつながるだろう。新しい言葉をやたらと使う前に、まず社内用語にしっかりとした語釈をつけることからはじめたい。