とんだ返還記念日になった。香港の話だ。23年前、97年の7月1日、香港が英国から中国に返還された。その時約束された、香港に高度な自治や司法の独立などを認める「一国二制度」が骨抜きにされようとしている。
中国・全国人民代表大会常務委員会は6月30日、政府による香港統制を強める「香港国家安全維持法」(国安法)を可決、香港で施行された。
米のシンクタンクなどが毎年発表する「経済自由度指数」で、香港は昨年まで25年間、世界1位を続けてきたが今年シンガポールに抜かれた。「逃亡犯条例」改正案によるデモの影響や政治不安、中国本土の干渉による恐怖が高まったとの理由からだ。ちなみに中国本土は103位。今回の国安法施行で、香港に進出する欧米や日系企業が「香港の金融機能、ビジネスの自由度が低下するのでは」と危惧するのも理解できる。
ただ香港人もデモや新型コロナウイルスで低迷する経済がこのまま続いて良いとは思っていない。ある世論調査で、国安法に反対する香港市民は56%。一方で34%が賛成していた。
香港の一国二制度は本来なら47年まで続くはず。返還20年だった3年前、多くの人が「この20年で香港の中国化が大きく進んだ。本当にあと30年、高度な自治が維持されるのだろうか」と危惧していた。その心配が現実となってしまった。