地方への移住が話題になっている。コロナ禍による外出自粛要請からリモートワークが広がり、従来型の働き方を見直す動きだ。当たり前のように毎日強いられてきた満員電車での通勤や、残業で遅くなり家族で一緒に夕食が取れない生活に疑問を持ち始めた人が多いのではないか。
高い感染リスクを避けるため、圧倒的な人口密集都市、東京から離れたいと思う人も少なくないのだろう。それでも、以前までは移住したくても仕事がネックになっていた。デジタル化が進んだ今、職種によっては地方での生活が可能だということがコロナ禍で実証されたことが大きな違いだ。
アパレル・ファッション業界でも数年前から東京一極集中の流れは少しずつ変わりつつあった。地方の繊維産地や縫製工場などによるファクトリーブランドが市場でも目立つようなってきた。地域に眠っていた資源を有効活用してローカルブランドを立ち上げる動きもある。ECによるDtoC(メーカー直販)型ブランドは地方でも十分可能だ。
地方の工場など生産現場では、人材確保のため東京など都会からの移住を歓迎しているものの、期待通りには進んでいない。そこにコロナ禍が追い打ちをかけた。これを機に、服作りの現場が魅力を輝かせることができるよう、業界全体が変わっていかなければならないだろう。