《めてみみ》対話の後に

2017/05/16 04:00 更新


 日本百貨店協会は会長に赤松憲三越伊勢丹ホールディングス顧問(6月に代表取締役会長に就任予定)を選出した。大西洋前会長の任期途中での辞任で、3月から難航していた後任選びが決着した。赤松会長は「一つひとつの課題を乗り越えて業態価値を高めたい」と抱負を述べたが、取り巻く環境は厳しさを増す。

 変化の象徴が三越伊勢丹HDの中期計画の見直しだ。20年度に営業利益500億円の目標だったが、いったん白紙に戻す。17年度から2年間で不採算事業を整理し、人件費などコスト削減に切り込む。成長路線から構造改革へ戦略転換する。

 杉江俊彦社長は4月の新体制発足後、「管理職社員と60~70時間の対話を重ねた」という。浮き彫りになったのはコスト意識の欠如だ。伊勢丹新宿本店は各領域で月間100以上のイベントを実施。「採算を度外視した催事の連発で方向性が分散。結果、皆が店の価値の低下を危惧している」と指摘。基幹店の構造改革まで言及した。

 コスト削減による百貨店事業の再構築は避けられない。ただ、利益回復後の成長ビジョンは見えない。小売業としての百貨店の再生は、業界共通の課題だ。売り上げ拡大と高粗利益の事業モデルなしに縮小均衡から抜け出すことは難しい。顧客のニーズや購買心理・行動といった変化への対応は後回しにできない。



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