大手百貨店のある経営者は「私が入社した頃、配属希望はファッションが7~8割を占めていた」と振り返る。今はその比率が逆転して「多くて2~3割だろう」という。婦人・紳士服のバイヤー・セールスが、花形から遠ざかる流れが止まらない。
不動産や金融など百貨店以外の業種を初めから希望する人も増えた。経営が百貨店一本足ではなくなってきていることの表れかもしれない。企業が従業員を育成するCDP(キャリアデベロップメントプログラム)も百貨店を中心とした単線型から、複数領域を経験する制度へと様変わりしている。
まず店頭からスタートして…という従来の育成モデルではなくなってきた。そうした中で三越伊勢丹ホールディングスは、デジタルを掛け合わせた独自の外商営業支援ツールを開発。それを使い、経験が浅いセールスでもベテランに近いパフォーマンスを実現している。このプログラムを開発したのは情報システム統括部データ戦略部の松嶋徹さんで、社内では「松嶋モデル」と呼ぶ。
外商活動の経験・勘の定性データと、自社カード、購買データ分析、AI(人工知能)活用による定量データを組み合わせた。「従来の人の力に頼るだけでなく、データで補うことを仕組み化した」と松嶋さん。こうした取り組みがビジネスモデルの変革に貢献していく。