地域性に寄りかからない 岡山発「20歳」の家具ブランド《プラグマガジン編集長のローカルトライブ!》

2026/08/21 12:30 更新NEW!


藤井社長(本社工場内で)

 岡山県里庄町で生まれた家具ブランド「マスターウォール」が今年、20周年を迎えました。母体のAKASE GROUPは、61年に赤瀬木工所として創業。婚礼家具の需要減少で経営危機に直面する中、ウォールナット無垢(むく)材のテーブル「ワイルドウッド」を起点に、06年にマスターウォールを立ち上げました。同年に社長へ就任した藤井幸治氏が、青山への直営店出店、銀座本店の開設、全国への店舗展開を進め、全国区のブランドへと成長。

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 同氏は20周年を迎えるにあたり、複数のデザイン会社と今後のブランドのあり方を検討し、ロゴの刷新さえ選択肢に入れました。「人間でいえば20歳。まだ大人になったばかり」。確立したイメージを守るだけでなく、これからも変化し得るブランドとして節目を迎えています。

美学と共に育てる

 マスターウォールの店舗やビジュアルから受ける印象は、洗練された高級家具ブランドそのものです。ウォールナットの重厚な質感を生かしたプロダクトと、一貫して打ち出される端正な世界観。一見すると、作り手の美学を前面に掲げ、顧客をその価値観へ引き込むブランドのように映ります。

木目も美しい「マスターウォール」のウォールナット製品

 しかし、実際の製品作りは驚くほど顧客の声に開かれていました。一般ユーザーだけでなく、取引先家具店の経営者や販売員にも年2回アンケートを実施。価格帯や使い勝手、求められる機能など、その声は商品開発に生かされます。

 「売れなければブランドにはならない」と藤井氏。かつては自ら商品開発も手掛けましたが、現在は開発から離れ、店作りなど顧客との接点作りへ軸足を移しました。

 顧客の要望に迎合して世界観を崩すのではなく、うまく取り入れて生かす。ブランド側が完成形を一方的に示すのではなく、使い手との往復をブランド作りの一部にする。高級家具らしい世界観と、生活者に寄り添う物作りを対立させず、両立している点にマスターウォールの強さがあります。

「マスターウォール」のために製材されたマスターウォールナット

100年先へ残すために

 マスターウォールは現在、14の直営店と全国57のエディションストアを展開。今後は本格的なフランチャイズにも踏み出し、直営店を20~25店まで広げる構想です。AKASE GROUPが掲げる目標は、全体で売上高100億円。藤井氏が見据えるのは数字の大きさではなく、出店や事業展開の幅をさらに広げるための企業体力です。

 地方発ブランドの中には、産地の背景や職人のこだわりを価値として打ち出す例が少なくありません。一方、マスターウォールは岡山発であることに頼らず、製品そのものの魅力によって全国に支持を広げてきました。今後、事業規模や販売網が広がる中でも、高級家具らしい世界観と顧客志向の両立が、ブランド運営の軸になります。

「マスターウォール」の製品全てに刻まれる焼印

 同社が掲げる理念は「100年後のアンティーク家具へ」。これは、長期間の使用に耐え、世代を越えて受け継がれる家具を目指す考え方です。その実現には、素材や技術、意匠の質に加え、暮らし方や消費者の価値観の変化を商品に反映する必要があります。

 産地の背景や職人性を前面に出すだけが地方企業の価値の作り方ではありません。マスターウォールの20年は、そのことを実績で示しています。

山本佑輔(やまもと・ゆうすけ) 04年に創刊した岡山県発のファッション・カルチャー誌『プラグマガジン』編集長。プラグナイトやオカヤマアワードといった地方発のイベントや企画もディレクションしている。24年度グッドデザイン賞で雑誌として史上初めての金賞(経済産業大臣賞)を受賞。通り名はYAMAMON(やまもん)。https://lit.link/yamamon


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