日々、新しいヒット商品が生まれているビューティー分野。新しい視点で女性のニーズをつかんでいるコスメブランドに、ヒットの理由や商品開発の裏側を聞いた。
担当者のリアルな感覚を生かし、忙しい女性たちが時間や手間をかけずにきれいになれる商品を提案している。
◇スタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニー「サボリーノ」
時短マスクで洗顔まで
スタイリングライフ・ホールディングスBCLカンパニーで、同社を代表するヒット商品が、「サボリーノ」だ。社内の〝女子開発ラボ〟から15年に誕生した朝用フェイスマスクは、「朝の準備をさぼりたい、でもちゃんときれいにしたい」という女性の本音を形にして、共感とともにビジネスを成長させてきた。
女子開発ラボは社長直下のプロジェクトチームとして、担当部署を超えて社員が集まった。御殿谷(みどのや)りえさん、大小原(だいこはら)碧里さん、齊藤久美子さんもそのメンバーだ。「自分たちが本当にほしい商品を作る」ということ以外はゼロからのスタートだったが、皆で意見を出し合うなかで挙がったのが「面倒くさいを解消したい」という等身大の声だった。
残業や飲み会で遅くなった翌朝、1分でも長く寝ていたい。でも会社に行くにはきちんとしたい。そこで、朝の準備を、寝ながらでも使える1枚のフェイスマスクに落とし込み、スキンケア、保湿下地、さらには最後にそのシートでふき取ることで洗顔の機能まで実現した。通常のマスクより短い60秒で、時短ケアできるのもポイントだ。
洗顔まで1枚で済ますことには社内でも賛否があったが、リアルなニーズを優先し商品化にこぎつけた。バラエティーショップで発売したところすぐに売り切れ、瞬く間に店舗数が拡大した。これまでに累計出荷数は4億枚(代表商品は32枚入り1300円)を突破し、雑誌などのベストコスメも多数受賞。朝用マスク市場を開拓した。
ほかに、髪が早く乾くスプレーや多機能シャンプー、夜用クレンジング&全身拭き取りシートなど、商品ラインナップを拡大してきた。20代を中心に売れているが、開発メンバーも年齢を重ねたことから、10月には大人向けの夜用高保湿マスクを出す。毎日スキンケアに手間をかけられるのが理想だが、今は効率とのメリハリをつける人も増えている。「これからも、女性が働く社会を応援できるような商品を提案していきたい」という。
◇かならぼ「フジコ」
化粧が苦手でも簡単に可愛く
かならぼ(東京)のコスメブランド「Fujiko」(フジコ)は、女性の心理をうまく突く発想や、魅力的なデザインでヒットを飛ばしている。
「私自身、化粧が得意では無かったので、女性が簡単に可愛くなれる商品を作りたかった」と吉濱佳奈社長。韓国で出合った眉ティントに注目し、16年に日本で発売したところSNSなど口コミで一気に拡大。発売半年で80万個を売り上げた。
19年2月に発売したアイシャドウ「シェイクシャドウ」(1280円)も反響が大きかった。従来のぬれツヤ系のアイシャドーの、二重の幅に溜まる、時間がたつとヨレる、くすむといった課題を解決するため、油分を取り除いた水アイシャドーを作った。
油分がないため水とほかの成分が分離しているが、自分でシェイクして使うひと手間が逆にインスタ(グラム)映えにはまった。透明な容器なので中身が分離している見た目もインパクトがある。「ポジティブな要素が多ければ、商品のネガティブな面も変換できる」
購買層は30代やママ層が多いが、「フジコの商品は時間がない朝に助かる」という声も多いという。例えば、3色のチョークをつなぎ合わせたような形状のチーク「チョークチーク」は、見た目の可愛さはもちろんひと塗りで絶妙なグラデーションが作れるのが特徴だ。
10月には新商品として、ミニサイズのリップ「ミニウォータリールージュ」を出す。市場でもミニサイズの化粧品が注目だが、フジコは楽しさを重視した。通常のリップに加えて黄色のリップベースや、重ねてトーンを調節するカラーチェンジャーを用意。おもちゃのブロックのようにケースを連結して何種類か持ち歩けるようにし、「服を着替えるように、その日の気分で選んでほしい」。
ドラッグストアやバラエティーショップを中心に販路を広げ、同社の19年9月期の売上高は前期比1.6倍の見込みだ。会社としては、「将来的にはコスメやプロダクトにとどまらず、企画力を生かしてさまざまなことにチャレンジしたい」と考えている。
(繊研新聞本紙19年9月27日付)