【理想の店を目指して シンゾーン㊦】客と店、作り手がハッピーに

2021/05/03 06:27 更新


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 19年に再び創業の地である表参道に店を出した。もう一度店を出すに当たって、自信を持って「ここなら長く続けられる」と思える場所を探した。

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創業の地に再び出店

 英国留学中に感銘を受けた「ヤスミンチョウ」、そして17年のオープン以降、じわじわと客が付くようになっていたビンテージショップ「プレラブド」の経験から、表参道店の立地は必ずしも1階である必要はない。客を引き付ける品揃えができていれば、むしろ「ビルの上階にあるほうがわくわく感を感じてもらえる」と染谷真太郎は考えていた。1番最初に出した店の場所に近い、ビルの3階に店を構えた。「表参道店を閉めるときに、お客様と『2年後にまた表参道店をスタートさせます』と約束していた。期間は間に合わなかったが約束を果たすことが大事だった」と染谷は話す。

 本社のショールームで金曜、土曜限定オープンのザ・ウィークエンダー・バイ・シンゾーンをスタートしたとき、「なけなしの金で内装をした」が、徐々に他店にはない独自性を打ち出すこと、スタイリングやルックで自分たちが本当に良いと思えるものを見せて客から共感を得ることも増えていた。

 特に役割が大きかったのはブログや紙媒体で商品と店、ブランドのストーリーを発信するようになったことだ。07年にスタートした「シンゾーンニュース」は、紙一枚から始まり、現在はタブロイドで年4、5回発行している。客とのよりダイレクトなつながりが必要になっていくなか、メッセージを直接伝えられるものとして大切にしてきた。情報の伝え方を強化するためにグラフィックデザイナーを自社に採用したことで「色々なアイデアが出るようになった」ことも大きい。タブロイドなどで「考えを直接伝えるのは、同じことを伝えるにも心が通い、熱量がより伝わる」という。

 19年の冬からは、そのシーズンの商品をセールで売ることをやめた。在庫が増えるリスクはあったが、始めてみてプロパー消化率は上がった。特に秋冬物は売り切る力もついてきた。働いているスタッフも値引きしないという前提ができたことで「後ろめたい気持ちになることなく接客販売できるようになった。在庫リスクが増すことはデメリットだが、ファッションビジネスでセールをしない決断は重要なことだ」。スタッフや店に対する信頼度が上がり、企画の段階でプロパーで売り切れる量を意識し、それまで以上に大事に作って売ることができるようになった。

 ビジネスで大切にしているのは「風を読む」こと。規模が大きくはない会社だからこそ本当はこうしたほうがいいことを率先して実施し、業界全体に投げかけることができると考えている。正しい軌道に乗るために必要なことはやっていく。

在庫を悪にしない

 そんな中、20年にスタートしたのがアーカイブショップ、ミドリコーヒだ。自分たちの手で在庫を消化したいという思いを形にした店で、コンセプトは「リ・エディット」(再編集)。商品が「店に並んでいるときはハッピーを提供するものなのに倉庫にあると悪のようになってしまう」のを打開したいというアイデアから実現した。15年に出したブルゾンと18年に出したワンピースを組み合わせてスタイリングしたら素敵だな、など自分たちの倉庫に買い付けに行くような感覚で商品を選び、今のムードに合ったスタイリングを組んで店頭で売っている。

 ミドリコーヒを出店する際に、おいしくてお茶のように飲めるコーヒーを出したいという思いから、オリジナル焙煎(ばいせん)のコーヒーも作った。東京都墨田区のアンリミテッドコーヒーと組んで、ニューヨークのデリで飲むようなコーヒーのイメージを形にした。服だけでなく、オリジナルのコーヒー豆も販売している。買い物するしないにかかわらず、来店客にコーヒーをふるまいゆっくりできる店にした。

ミドリコーヒでは店内でコーヒーを提供している

誇らしいデニム作る

 これから先の10年で「レディスのデニムといえばシンゾーンにしたい」と染谷は話す。そう考えるのは、自身が「ジーパンが好き」だから。日本一のデニムブランドを目指す。日本一の基準は様々あるが、具体的に売る数量よりも「お客様が買って、誇らしく思ってもらえるものを作りたい」という。

 同時に日本の物作りを大切にしたいという思いもある。メイド・イン・ジャパンのデニムアイテムにこだわり、情熱や技術を世界に向けて発信していく。海外でも「一つの国に一軒のディーラーがいて、日本の物作りやデニムの良さを知ってもらえるようにしたい」とも考えている。既に韓国では「ザ・シンゾーン」の商品を置いている店がある。この目標を実現するためにもさらにデニムを極めていくつもりだ。

 デニムは原料の綿こそ海外で栽培されたものを使うが、紡績から染色、織布、縫製と製品化までのプロセスを日本で行うことでこだわって作ることができる。日本の産地や工場には、自分たちが苦しいときに支えてもらったこともあった。

「自分たちが軸をぶらさずに成長することで、店もお客も、関わってくれる産地や工場も三方良しで皆をハッピーにしたい」

 だからこそ、これからは日本の物作りを守って恩返ししたい気持ちがある。(敬称略)

染谷真太郎副社長兼クリエイティブディレクター

(森口萌美/繊研新聞本紙21年3月8日付)


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