接客しない接客?(続編)(藤永幸一)

2016/09/12 00:00 更新


先日投稿した、「接客しない接客?」に多数のリーチがあったと連絡をいただきました。現場で活躍されていらっしゃる方々の共感を得たのだろうと思います。ありがとうございます。

ただ、「その通りなのだけれど、じゃあ、どのように対応すればよいのかを知りたい」という声がありました。確かに、前回の記事ではそこまで踏み込んではいませんでした。そこで、弊社のウェブサイトライブラリー=レックス・タッチにアップしている「回答事例」を紹介させていただきます。

◆ 52 new! プロの会話力

接客では、お客様との会話力が求められます。基本的なスキルについては、「相槌の達人」で説明しました。ここでは、さらに上級編として、プロレベルの会話のつくり方を学んでください。ベースになるのは、相槌の3ステップです。

たとえば、「白のパンツ」を探していると言われるお客様に対して・・・。

 


 

STEP1 表面的な軽い会話

「白のパンツをお探しですね」と相手の言葉を受けて相槌を打ちます。相槌の打ち方のステップ1=オウム返しの相槌です。お客様と接客をスタートしたばかりの初期の対応です。「事実」=情報の確認なので、心理的な高揚は生まれません。

STEP2 浅い共感

相槌の打ち方のステップ2=違う言葉、表現で相槌を打つを応用します。「白のパンツ」という情報に対して、共感を示す会話です。このタイミングでタイプ別対応のフレーズに展開できるか、どうか?

視覚タイプのお客様に「白のパンツはスタイリッシュにまとまりますよね」「白のパンツはすっきりしたシルエットになりますよね」 

感覚タイプのお客様に「白のパンツはとても上品な雰囲気です」「白のパンツは大人の感じが漂います」

聴覚タイプのお客様に「白のパンツは、○○スタイルで着こなしてください」(情報を提供する)

STEP3 深い共感

相槌の打ち方のステップ3=お客様の心に響く相槌を応用します。買い物がワクワクしてくるように、「白のパンツ」を探しているという気持ち、心理の深い部分に働きかけます。接客が上手なスタッフは、このフレーズをたくさん持っていて、巧みに、でもさりげなく使っています。

白のパンツというアイテムから、ライフスタイルなどに話題を広げていくアプローチです。このフレーズで、お客様の気分がぐっとオープンになります。

「(白のパンツを使った)どんなスタイルを描かれていますか?」

「(白のパンツを使った)どんな雰囲気を大切にされたいのですか?」

「(白のパンツに)惹かれたのは、なにかきっかけがありますか?」

◆ 53 new! プロの会話力(続)

プロの会話力で求められるのは、スタッフが勢い込んで情報提供する態度ではなく、お客様が自然に心を開くように導くことです。

「白のパンツ」を探しているお客様を事例にしましたが、たとえば、お客様が探している商品がなかった場合の対応も考えてみましょう。従来の「売上」重視の売り手目線のマネジメントならば、白がないならば、他の色をお勧めするということになりそうです。

ですが、「白」に関心を持っているお客様に、他の色に興味を持たせるのは、実はそう簡単ではありません。他の商品がよほどすばらしく、お客様の目を惹くか、あるいは、お客様がスタッフに対して信頼感、安心感を持っているかの条件をクリアしなければなりません。

 


 

つまり、いずれの場合も、「お客様のお役に立ちたい、喜んでいただきたい」という真摯な態度が伝わればこそ、提案を受け入れてもらえるのです。

「白がない、他の色を勧めることをしない」から、やる気がないと判断して、「在庫がない場合は、他の商品をお勧めする」ことを徹底しても、「指示」されたからやっているとすれば、お客様を購買に導くのはむずかしい。

それ以上に、買上につながらない事実の積み重ねが、接客嫌いなスタッフをつくりかねません。これが、もっとも避けたいことです。では、具体的にはどのように対応すればよいのでしょうか?

お客様がお探しのものに近い商品でしたら、○○のお店に置いていると思います

と、他ブランドの情報を提供するくらいの懐の深さが望まれます。

普段から自店だけでなく、館の情報、他ブランドの状況を掌握していく努力を惜しまないことです。その努力がプロの会話力を育みます。プロが考えているのは、いつもシンプルなことです。「目の前のお客様に買い物を楽しんでいただきたい!

「たくさんの店の中から私たちの店を選んでいただきありがとうございます。お探しのものはあいにくとございませんが、一つ、お勧めさせていただいてもよろしいでしょうか?」。白でない色を提案するときも、このくらいの前置きは欲しいものです。



20年のアパレル体験で痛感したこと=仕事の悩みは、本当のところ、「人間関係」。2000年に、「レックス」を設立。「仕事を楽しむスキル」を学んで、「元気な現場」をつくるサポートをスタート。自分が「楽しい!」と感じれば、相手にも好感度が伝わる!大手アパレルとの長いお付き合いで、スキルは常にバージョンアップ中!



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