「ジュン・アシダ」はブランド創立60周年を迎え、24年春夏コレクションは初めて「タエ・アシダ」と合同ショーで発表した。ショーにかけた思い、デザイナーとしての考えを芦田多恵に聞いた。
(松本寧音、写真=加茂ヒロユキ)
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二つのショーをいっぺんにするということもあり、いつもよりかなり大きなものを背負った感じでした。長いタームで準備してきたことを終えることができて、まずはホッとしています。60年を迎えられたことに、とても感謝しています。
ジュン・アシダは、たくさんアーカイブを盛り込みました。51点中21点がアーカイブです。資料を見返しているうちにこれも入れたい、あれも入れたい、今のほうがむしろ受け入れられるんじゃないかというものがいっぱいあって。生地は変えましたが、すべて当時のパターンのまま組み立てて、今の時代に合ったパターンにしてお見せしました。
60年を知っているのは唯一、母だけ。母の60周年でもあったと思います。アーカイブの仮縫いには、母も立ち会いました。当時の面白いアイデアを今の洋服にしていく作業は、私もすごく勉強になった。父がこれを作った気持ちに思いをはせることもありました。長く続けていると、うちでしかできないことがあるはず。それはクオリティーの高い洋服を作っていくことだと考えました。それには技術が伴わなければいけないし、それを扱う目がなければいけない。
ただそこであぐらをかいてしまうと、どんどん世の中から取り残されてしまう。残すものがあるからこそ、変わっていかなければならないものがある。それを常に意識しています。小さくても新しいことに臆せず飛び込むことが、私にとっては一番学びが多い。やってみると、結局そっちがスタンダードになることもあるんですよね。
今の空気感や新しい情報をキャッチするために、特別なことはあまりしていません。普通に過ごしていたら見過ごしてしまうようなことに対して疑問を持つ。そういうのが面白いかなと思います。