花菱縫製 車椅子利用者用オーダースーツ 女性向け開発

2018/08/24 06:30 更新


 花菱縫製(さいたま市)は9月7日から、女性の車椅子利用者向けオーダースーツを銀座、池袋など直営6店で販売する。1年半前から男性用を販売している経験を生かし、新たに女性用を開発・商品化した。「車椅子利用者向けの商品開発は、需要は限られるものの、今後の高齢化社会への対応としても可能性がある。柱事業として定着させたい」(野中雅彦社長)としている。

(大竹清臣)

 車椅子利用者向けのオーダースーツは17年3月に男性用をスタートし、約100着を販売、遠方からの来店やリピーターも増えるなど好評だ。男性の購入者の声から、パンツの前側を浅く、後ろ側を深くするなど改良した。しかし、女性向けは男性以上にシルエットの美しさを重視する傾向が強いため、開発に想定以上の期間をかけることになった。男性用と同様に車椅子を利用するアスリートに協力してもらった。

 基本的なパターン設計は男性と同じく座位姿勢を前提に、見栄えはもちろん、車椅子をこいだり、着脱したりすることにも配慮した。ジャケットは前身頃の丈を短くしボタン位置を高くすることで、裾のめくれ上がりやだぶつきを抑制。肩回りを動かしやすいように袖付け外周寸法を大きくした。袖先に人工皮革を付けて磨耗を防ぐ。無料オプションでウエストのゆとりが調整できるようなボタンの配置が選択できる。

 パンツは、ひざ裏3本の縫い込みによって160度の屈曲を実現。ウエストをわきゴム仕様にしたり、裾のほつれ防止に補強テープを加えたり、前裾を長くして座位時に裾が水平に見えるようにした。有料オプションで手先が不自由な人向けにファスナーにストラップを付け、合わせる部分を面ファスナーに変え、ひもを付ける仕様にもできる。スカートも座位を前提にした曲線があるパターンで前後差をつけてだぶつきと背中が出ることを抑制している。

 価格はスーツで通常オーダー品より9000円高い。ジャケット、パンツ、スカートは通常品より4500円高く設定。納期は約4週間。国内の自社工場で生産する。

 直営6店はバリアフリーの店舗環境を整え来店しやすくするとともに、販売員にサービス介助士の資格取得者(現在取得中含む)を配置するようにした。専用トイレやマッサージベッドを設置した店もある。野中社長は、「今回の取り組みのような難易度の高いカスタマイズ対応は、競争が激しさを増す既存のオーダースーツ市場でも強みを発揮できる」と強調する。

着心地はもちろんシルエットの美しさを追求した女性の車椅子利用者向けオーダースーツ


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