政府は大企業と中小・小規模事業者の取引適正化のため、26年に親事業者から下請け事業者への約束手形を利用した支払いを廃止する方針を決めた。中小企業庁が2月19日に開いた有識者会議「約束手形をはじめとする支払い条件の改善に向けた検討会」で報告書をまとめた。今夏をめどに、繊維を含めた産業界と金融業界に26年の廃止を見据えた自主行動計画の策定を要請する。
約束手形は「これまでの日本経済の発展と企業間決済で大きな役割を果たしてきた」(梶山弘志経済産業大臣)ものの、繊維業界を含め、「支払いサイトが長く、手数料も高い」(同)ことから、下請けの中小・小規模事業者の多くの資金繰りに影響を与えている。そのため、政府では中企庁が中心となって、各業界団体に数年前から支払いサイトの短縮と現金払いへの移行を促してきた。今回の廃止方針はさらに踏み込んだもの。
1月26日に中企庁など関係省庁が開いた検討会「第1回中小企業等の活力向上に関するワーキンググループ」では将来的な廃止を目指し、24年をめどに支払いサイトの60日間への短縮と割引料の親事業者による負担を産業界に徹底する方針を決めていた。手形の廃止は取引適正化とともに、紙の約束手形をなくすことで政府が重点方針に掲げるペーパレス化とデジタル化を促進する狙いがある。
梶山経産相は2月19日の閣議後記者会見で、「業界によって(取引慣行の)特性がある。5年後の廃止を目指しながら、今後業界と丁寧に対話していきたい」と語った。