【連載】ローカルでいこう 17年春・福岡編④

2017/05/06 06:30 更新


 ファッション業界でプロとして働いてきた女性が、その経験やセンスを生かして立ち上げたブランドのヒットが続いている。

 そうした存在に育ちそうなのが、福岡で15年4月にスタートしたバッグブランド「イントキシック」だ。市内のセレクト店店長やバイヤーを経て、レザーグッズで知られるラグジュアリーブランドで10年間販売員をしていた奥村展子さんが立ち上げた。

 敏腕販売員として活躍し、「お給料も良く、同僚にも恵まれていた」が、元々の独立心の強さから「サラリーマンでは終われない」と一念発起。ファッションデザインの専門知識が無かったため、福岡のデザイナーが開いている学校に半年間通い、週2回はインターンとしてもデザイナーの元に通った。

 妊娠したことで立ち上げはやや遅れたが、今は持ち前のガッツで子育てとブランド運営を両立している。バッグブランドのため、販売員時代の知識や経験も生きているという。

インスタ強みに

 コットンキャンバスに、籐(とう)かごの柄やグラフィック柄をプリントしたトートバッグやショルダーバッグ、レザーポーチが代表的な商品だ。自社サイトでの販売とともに、福岡で雑貨の輸入や企画を手掛けるブルーランクを通して卸販売もしている。卸し先はフカヤが運営する「タンタン」、大名の「カオスボヘミア」など、九州の専門店を中心に40~50店がある。

 可愛らしいデザインとともに、強みとなっているのが、インスタグラムでの発信だ。奥村さん自身がモデルとなり、全身コーディネートの中でバッグの魅力を伝えている。「インスタグラムのフォロワーが増えると、サイトの受注も伸びる。ある地域から注文がくると、そこで何件も注文が入るので、口コミで広がっている感覚がある」という。こうした〝インスタ売れ〟はありがたいが、満足はしていない。「今はインスタ発信で売るママブランドがすごく多いから、そこと一線を画したい。どんな店に置いても恥ずかしくないブランドに育てたい」と話す。

ビジュアルの作り込みも魅力。バケットバッグ(右下)1万8000円、ショルダーバッグ1万4000円 

夢は海外販売

 自宅をアトリエとしていたが、16年に薬院に事務所を構えた。17年3月には株式会社化し、スタッフも正社員にする。

 少しずつステップアップし、いつか海外でも販売することが目標だ。「そこまで目指さないなら、ブランドをやる意味なんてない」と頼もしい。「困ったことがあれば言いなさいと言ってくれる人が周りに多く、励みになる。だからこそ、困ったと言わないために頑張る」。この言葉に、福岡のファッションコミュニティーのつながりの濃さが表れている。

デザイナー兼代表の奥村さん




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