グローバル大手小売り3社の直近四半期業績 ファストリは海外伸び増収増益

2019/09/07 06:29 更新


 グローバル大手小売り3社の直近の四半期業績は、実店舗とネットの買い物環境の統合が実ったインディテックスが2~4月は増収増益を維持した。H&Mは増収こそ果たしたものの、販管費がかさみ、3~5月は前年同期に続き、営業減益を強いられた。

 ファーストリテイリングは、上期に冬物の売れ行き不振に見舞われたが、3~5月は国内ユニクロで在庫水準の適正化が進み、中国事業も好調で、増収増益を果たした。

(柏木均之)

実店舗とECの統合さらに進む

 インディテックスは、17年2~4月に2ケタ増収増益だったが、その後18年度も19年度も第1四半期ベースの増収増益を果たした。

 実店舗とECの在庫一元化に加え、昨年11月から主力の「ザラ」で新たな自社ECプラットフォームが稼働し、販売市場が拡大したことが大きい。

 好業績が続く背景には、全世界で進める実店舗とECの統合が効果を上げていることがある。実店舗を好立地へ移転し、在庫も一元化したことで、ECで注文した商品の店頭受け取り、返品が可能になり、EC売上高が各市場で伸びただけでなく、客の来店も増えた実店舗の売り上げも伸びた。

 H&Mは、ECプラットフォーム変更に伴い、主力市場のドイツでの販売が第1四半期に続き伸び悩んだが、アメリカやロシア、中国などは増収となった。値引き販売も前年同期より減ったが、物流網の高度化、デジタル化に対応できる経営基盤構築に向けた投資コストが増え、営業減益が続いた。

 同社もインディテックス同様、実店舗とECの統合を進めつつあるが、カール・ヨハン・パーションCEO(最高経営責任者)は、そのための投資が「短期的にはコスト増要因となっており、新たに導入したECプラットフォームと物流システムは、まだ完全にその効果を上げるに至っていない」とする。

 一方、インディテックスのパブロ・イスラ会長兼CEOは、「自社ECと実店舗を結ぶ、ビジネスのデジタル化を進めたことが業績に勢いをもたらした」と話す。リアルとネットの買い物体験統合と、それを支えるグローバルな物流網構築の進捗(しんちょく)の差が、2社の直近四半期業績に現れたようだ。

早期見切りで在庫消化・健全化

 ファーストリテイリングは主力の「ユニクロ」で、国内事業の不振が続いたものの、海外は中国を中心に販売が引き続き好調で全社業績をけん引した。また「ジーユー」も品番数を絞りマストレンドにフォーカスした商品構成にしたことでヒット商品が生まれ、既存店売り上げが伸び、増収増益となった。

 国内ユニクロ事業は暖冬による冬物の売れ行き不振で上期(18年9月~19年2月)微減収、2ケタ減益だったが、在庫消化を急ぎ、3~5月の春夏物も売れ行きの鈍い商品は例年より早い段階で値引き販売した。この結果、総利益は減益となったが、「在庫の中身は健全化した」という。

 3~5月で見ると、国内ユニクロの既存店売り上げは3月こそプラスだったが、4、5月は減収。ただ、例年集客の仕掛けとして5月に行う「感謝祭」を今年は6月に一部日程がずれ込むタイミングで実施しており、6月の既存店売り上げは2ケタ増となった。

 3~5月で春夏物在庫の消化を進めたこともあり、第4四半期の6~8月は値引き販売が前年より減り、大幅な増収増益となる見通しだ。海外ユニクロ、ジーユーも増収増益基調が続くため、同社は19年8月期で、売上収益2兆3000億円、営業利益2600億円と過去最高の業績を計画する。

 在庫を次シーズンまで残せば、経費増につながり、値引き販売で消化を急いでも粗利益率低下は免れない。H&Mも昨年来、この悪循環に苦しんでいる。ファーストリテイリングの場合、19年度は秋冬商戦の不発で在庫が膨らんだが、在庫水準の適正化で、期中にしっかり収益性を立て直す考えだ。

(繊研新聞本紙19年7月22日付)



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