フェムテックへの理解を広げ、市場形成に取り組んでいるフェルマータは、吸水ショーツは広がってきたものの、フェムテックの浸透が今一つと見て、「女性の健康課題についてのタブー視を解消する啓蒙、研究」などをさらに強めていく。
フェルマータのミッションは女性の健康課題を解決するためのフェムテックへの理解を広げ、市場を作り出すことだ。そのために啓蒙(けいもう)、研究、政策、企業支援に取り組んでいる。啓蒙で力を入れているのは19年に始めたフェムテックフェスというイベント開催だ。フェムテックへの理解を広げ、幅広い製品を紹介する企画だ。日本ではあまり紹介されていない海外のフェムテックアイテムなどを揃えている。研究は東大や慶応大と組んで進め、東大チームとはおりものを電解質測定し妊娠時期を割り出す研究を進め、研究成果に基づいたデバイスを販売することができるようになった。
政策での取り組みは薬事関連で性に関する器具に対応するカテゴリーや用語の新設だ。厚生労働省に認められている用語はほとんどなかった。厚労省などとの関係を強めながら、子宮口キャップ、骨盤底筋訓練器具、家庭用膣洗浄スポンジの三つが医療機器用語として厚労省により新設された。企業支援は同社売り上げの7割を占める主力事業だ。相手先は物作りで参入する大企業が多いが、福利厚生でサポートを求める企業もある。
フェルマータが活動を始めたのは19年秋。当時は特に女性の性に関する多くがタブー視されており、例えば生理痛の感じ方に関する調査などもない状況で、商品開発どころか研究データすらないというのが実情だった。欧米で開発された商品も売るための枠(カテゴリー)がなく、そのための法もなく、法整備する理由すら出ていなかった。
19年に東京・渋谷でフェムテック製品などを紹介するイベントをこぢんまりと開催したのが最初で、SNSだけで告知し、小ぶりのわりには好評だった。当時は日本に入っている吸水ショーツはごく一部で、吸水ショーツの存在を知る人も非常に少なかった。
その後、フェムテックという言葉は徐々に認知され、関心を寄せる企業も増えた。とくに吸水ショーツはユニクロやファミリーマートでも販売されるようになるほど広がりを見せている。同社では日本にないものや普及していない海外品を紹介することを基本としており、吸水ショーツについてはかなり出回り始めたことから、扱いを絞り込んだ。日本にはほとんど出回っていないものの売れているタンガ形状の吸水ショーツなど一部に限定している。また、生理用とうたえない現状の解決にも取り組んでいる。
生理の経血の処理については日本ではタンポンの使用割合が低い。最近では吸水ショーツには目を向けるものの、月経カップがなかなか広がらない背景には膣に物を入れることを忌避するイメージが強く、性についてのタブーが影響していると見ている。同社ではフェムテックへの認知は広がってはきたものの、ブームが一段落したと見ており、性に対するタブーは根深いと見て今後の広がりに危機感を抱いている。
同社ではさらにタブー視を和らげる取り組みを強め、世界の19のフェムテックハブ団体とのネットワークを生かしてフェムテックの市場形成に力を入れる。とくに日本やアジアにない商品の導入、性能に裏付けがあって〝欲しい〟と思えるものの紹介、専門家や各種試験によって安全性が確認できているものを積極的に提案していく。