【ファッションとサステイナビリティー】スパイバー 「ブリュード・プロテイン」の量産スタート、世界へ拡販

2023/11/27 05:28 更新


関山和秀取締役兼代表執行役

 サステイナブル分野においてスタートアップが市場を広げている。環境配慮型の革新的な素材やデジタル技術開発で、新たな需要を掘り起こしている。社会貢献と経済合理性を追求しながら新しい市場領域を創出することで、繊維・ファッション業界を活性化している。

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 人工たんぱく質素材「ブリュード・プロテイン」(BP)で初となる量産プラントがタイで昨年7月に本格稼働を始めました。出資を受け、共同開発を続けてきたゴールドウインで今秋、初めての量産アイテムの販売が始まり、ようやくスタートラインに立てたという気持ちです。同時にこれからが楽しみでわくわくする思いもあります。

技術さらに進化

 ゴールドウインの量産品は、昨年7月に生産開始したBPの糸がまさに使われており、販売に間に合わせるのにギリギリでした。これまでは山形県鶴岡市にある本社で小規模なテスト生産を行ってきましたが、タイでは初めての量産でしたし、発酵の条件設定など時間もかかりました。

今秋、初めて量産アイテムで採用。表地にBPを60%使った「ゴールドウイン」のジャケット

 タイでのベースを確立するためにこの1年は拡販を抑えてきましたが、これからタイでの稼働を上げ、供給を増やしていきます。今期中には年100トンペースに乗せ、来年には240トン、さらに2、3年後にはフルキャパの500トン前後を見据えています。

 微生物の遺伝子組みや発酵プロセスといったバイオ技術の条件を試しながら、より生産性を上げる努力も続けていきます。タイの中量産技術をベースに、穀物大手の米ADMが手掛ける米国での量産化につなげていきます。現在はサトウキビなどを原料にしていますが、未利用のバイオマス原料など非可食への置き換えも目指しています。

 アパレルメーカーなどとの取り組みと並行し、糸・テキスタイルの開発も強化しています。22年にセールス部門の体制を強化してオープンイノベーション型に転換、長谷虎紡績、豊島、エイガールズ、植山テキスタイル、丸安毛糸や海外紡績といった得意技術を有する先との協業を進めてきました。今年の6、7月に開かれた伊ピッティ・フィラーティ、仏プルミエール・ヴィジョンパリ、伊ミラノウニカといった糸・生地の見本市で披露し、24~25年秋冬向けにグローバルな販売が本格化する予定です。

代替レザーも

 以前は高級市場にフォーカスしすぎていましたが、複数の伊紡績企業との取り組みを強化して中高級ゾーンへ対象を広げ、取引先からも好感触を得ています。バイオベースのサステイナブル素材として環境価値を認めてもらっていますが、柔らかな風合いなど素材特性も評価してもらえています。ウール70%・BP30%混紡でカシミヤのようなタッチを実現しつつ、カシミヤよりも価格を抑えられるといったゾーンを狙っていきたいと思います。

 BPを使ったスパンデックス代替繊維を英展示会で披露するなど、BPを活用した次世代の素材開発も進めています。基布にBPの液体を含侵させた代替レザーなども開発テーマにしています。

 小松マテーレと「共創パートナーシップ体制構築」に取り組むことで合意しましたが、こうした新しい皮革代替素材や、現在は石油由来樹脂が使われている防水透湿膜を人工たんぱく質で置き換えるといった素材開発にも取り組みたいです。

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(繊研新聞本紙23年11月27日付)

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