ニット、カットソー主力の中堅OEM/ODM(相手先ブランドによる設計・生産)、フェニックス・インターナショナル(東京)が納品先との新しい取り組みを昨年秋から始めた。展示会でシーズンの全量を受けるやり方を改め、初期受注を最小限に、追加で納品し消化を高める狙い。消化率が改善すれば、以降の製造原価を高める余地が生まれ、消化率もさらに上がる、というのが描くシナリオだ。「無駄に安いものではなく、高付加価値で長く愛される商品を作る。それが、フェニックスが考えるサステイナブル」と言う脇坂大樹社長に話を聞いた。
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得意先の展示会での全量発注には15年ぐらい前から無理を感じていました。成熟した消費社会で売れ筋を予測するのは簡単ではないからです。そのころは残品もさほど気にせずにいられたかもしれませんが、昨今のサステイナブル(持続可能)やSDGs(持続可能な開発目標)の考え方が広く共有される中で同じようなやり方ではもはや立ち行きません。
取り組み先には、「最初から全部発注しなくていいですよ」と話しています。本当は1回で全量発注してもらった方が商売は楽。追加対応を重ねるとコストがかさむし、シーズン途中で注文がなくなり売り上げが減る可能性もありますから。それでも、売れ残る前提での注文は受けたくないんです。値引き販売を前提にすると製造原価を犠牲にせざるを得ない。そうなると余計に売れにくくなる。ずっとこの繰り返しです。残品が二束三文で販売されるのも気分がいい物ではありませんしね。
もっとも、追加で納品するのは机上で言うほど簡単ではありません。仕組みをきちんと整えないと実現できない。我々はコロナショックの前から工場コンサルを雇い、自社だけでなく、国内の協力工場についても自分たちのリスクで設備投資をしてきました。
国内は長野、新潟、徳島、青森の協力工場、中国は蘇州や重慶の自社工場が対象。生産効率を高めるための動線の見直しや設備の更新などを順に行っています。トラブルゼロが目指すところで、品質を維持するため外注も禁止にしました。レギュラー商品なら、発注から納品まで最短で2~3週間です。実際にシーズン中に8回、追加納品したブランドもあります。
現在の取り組み先は大手アパレルやセレクトショップ、通販会社など、我々の考え方に賛同してくれている5社です。どこも名だたる企業ですが、さらに別のセレクトショップや有力専門店チェーンにも関心を持ってもらっています。取り組みは始まったばかりですが、9月までの上期の売り上げは計画を13%上回る見込み。コロナショックが長引き、ここにきてさらにマーケットの状況は悪化していますから、既存の得意先へのサービス強化で結果を出すつもりです。
(繊研新聞本紙21年8月30日付)