「私の使命は、家族、従業員、地球上の人々の体と精神の健康、そして私たちの地球を守ること。そのために常に世界の動き、経済、人種問題を含む社会問題、環境破壊による気候変動に目を向ける。パタゴニアは北米のほかに、欧州、日本、オーストラリア、チリ、アルゼンチンに支社を持つが、今後も世界の地域で、気候を安定させるべくワイルドな自然、河川敷、土壌、安全な食とファイバー(綿)を守る活動をする」。パタゴニアワークスのライアン・ゲラードCEO(最高経営責任者)はこう話す。
(サンフランシスコ=立野啓子通信員)
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コロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)で、同社は3月中旬から5月末まで、倉庫で働く人たちの健康を考慮し、ECを含む営業活動を停止した。社員はリモートワークとなったが、夏にはサプライチェーンが正常化し、本社の託児施設やカフェテリアも再開。「コロナ禍は、消費や旅行など全ての経済活動を減速させたが、若い人たちが環境問題や循環経済に大きな関心を寄せ、組織を作り、その活動に積極的に参加し始めたことに勇気付けられている」という。
アウトドア市場については「外出自粛が続いたこの8カ月の間、人々はジョギングやウォーキング、自転車など外に出て活動する機会が増えた」とし、今後は「夏にキャンプが盛んだったように、冬もスノースポーツが盛んになるだろう」と予測する。
パタゴニアは創業以来、「真摯(しんし)で一級の物作り」を貫きながら、環境保護と営利活動が相反しない活動を続けてきた企業。業界初のリサイクル素材使用(05年)やSAC(サステイナブル・アパレル連合)の設立提唱(11年)、カリフォルニア初のBコーポレーションの認定(12年)、「食」を含む生活全体を包括するパタゴニアワークスの設立(14年)など、他社に先駆けてサステイナブル(持続可能な)な活動に取り組んできた。
企業の社会的責任も重視する。ヘイト発言が多いフェイスブックやインスタグラムから広告を撤退。今年のブラックフライデーでは消費を控え、持っている服のリサイクル、リペアを訴求するため、修繕を担う100人のスタッフを動員した衣服の修理プログラム「ウォーン・ウェア」を実施する。
同社はアウトドアメーカーとして、卸とEC、自社店舗(北米40、日本21、その他地域で35)でビジネスを広げ、メンズとウィメンズ向けの売り上げ割合はほぼ同じという。
9月24日に就任したゲラート氏は、フロリダ州で生まれ、大学はビジネスを専攻した。95年に登山用具のブラックダイヤモンドに入社し、その後社長に就任。14年にパタゴニアに移る。国際市場では6年間の欧州のほかに、香港と中国5年の経験を持つ。趣味はロッククライミング、バックカントリーのスノーボート、サーフィンなどアウトドア活動。国際感覚とビジネスセンスを備えた48歳。
(繊研新聞本紙20年11月25日付)