《ちょうどいいといいな ファッションビジネスの新たな芽》「サークチュール」 お客様を知り、自分を深く知る

2025/01/31 11:00 更新


サークチュールを運営する村山純一さんと谷本史織さん

 帽子ブランド「サークチュール」は、帽子の国内SPA(製造小売業)企業でデザインから生産まで約20年の経験を積んだ村山純一さんと谷本史織さん夫妻が21年春に始めました。都市部の百貨店での催事、自社EC、アトリエ(アポイント制)で販売しています。国内の卸売先はほとんどありませんが、24年から中国の百貨店・小売店で販売を開始しています。

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高品質で独自性

 2人が目指しているのは、楽しい気持ち、前向きになれる帽子、着用した人が一段と輝いて、周りの方にほめられる帽子です。チュールやレース、オーガンディなどを用いた繊細でファンタジックなデザインに特徴があります。こだわりの素材、手仕事を大切にしたラインナップが揃い、信頼する職人さんに高度な技術で仕立ててもらいます。

 デザインは主に谷本さんが担当。動物や花のモチーフを用いて大人の女性も着用できる、上品な印象に仕上げています。アイコニックな商品は、動物をイメージしたシリーズ。前職で東日本大震災の後、子供も大人も笑顔になれる楽しい帽子を提供したい思いで作ったことがきっかけでした。「売り上げよりもお客様に笑顔になってもらうことが大切だ」と考えて作ると、予想に反して良い実績を上げました。その時の経験からデザインを発展させています。店頭では「面白い!耳がついてる!」「これは他にないね」と声をかけられ、目的買いの来店もあるそうです。

商品は3万~5万円台が中心。想像を超える商品作りで新しい価値を提供する

喜びの声を励みに

 対面接客を大切に考え、期間限定店では村山さんと谷本さんも来店客に積極的に話しかけて、どんどん試着してもらいます。「お客様を知ることは、自分自身を深く知ることにつながり、自分自身を知ることでようやくブランドの基盤が築かれる実感がある」と谷本さん。

 許可を得て試着の様子を撮影し、会話したことやメッセージを添えてSNSで紹介します。店頭の様子が伝わり、一般の方の着用写真はコーディネートの参考になると好評です。ブランドの世界を反映するよう丁寧に作り込んで、長いお付き合いをしていくコミュニケーションの一環と考えて、熱意を込めて取り組みます。現在の客層に合わせ、日本語、中国語、英語で発信しています。

店頭ディスプレーでも世界を表現

 一方で、お客様からいただく喜びの声は、一番やりがいを感じる瞬間です。商品が届いてうれしいと連絡をくれたり、旅先などで着用した画像をエピソードを添えて送ってくれたり。

 25年春からは、村山さんがデザインするユニセックスラインを始める予定です。それらの商品も加えて国内外の卸売りを進めていきたいそう。数年後には直営店を持つこと、海外での期間限定店の開催を目標にしています。

■ベイビーアイラブユー代表取締役・小澤恵(おざわ・めぐみ)

 デザイナーブランドを国内外で展開するアパレル企業に入社、主に新規事業開発の現場と経営で経験を積み、14年に独立、ベイビーアイラブユーを設立。アパレルブランドのウェブサイトやEC、SNSのコンサルティング、新規事業やイベントの企画立案を行っている。



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