19~20秋冬コレ総括レポ

2019/03/20 20:00 更新


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「肩」いからす80'sの行方は?

 約3週間にわたった、ミラノ、パリのサーキットを終えたコレクションチームの小笠原拓郎編集委員と青木規子記者の2人に今シーズンの総括をしてもらった。

コレクション前のインタビューはこちら≫≫19~20秋冬コレの見所は?

ーコレクション報道、ご苦労さまでした。まずは今回の全体的な印象を。

小笠原 多くのデザイナーが表現した「女性像」がちょっと変わってきた、というのが一番大きな変化。強い感じが入ってきている。何が目につくかと言うと、"パワーショルダー"なんて呼んでいる「肩」なんだよね。前シーズンの時にボリュームを強調したブランドが減ってきているという話をしたじゃん。確かに、ボリュームがあるブランドもあるけど、それらも肩にポイントを置いてボリュームをつくる、という感じになっていた。

ー具体的には。

小笠原 ジャケットやコートの肩が大きかったり、コンケープドしてたり、スクエアショルダーだったり。80年代を思わせるイメージのシルエットが多かった。女性の服で肩を強調するのは、女性像としては強い感じが出てくるから、これが今回のコレクションの大きな特徴になった。

青木 80年代が一番大きな流れ。肩を強調するために、ウエストも絞って逆三角形のシルエットをつくっていました。ここ数シーズンも80年代の気分を少しずつ感じていましたが、今シーズンはドンズバです。ブランド側が「80’sです」と言ったのは今回が初めてでした。ただ一方で、今を生きる女性のリラックス感のあるスタイル、言わば(「セリーヌ」のデザイナーだった)フィービーがつくり上げた流れもかたまりとしてはあって。この2大スタイルですね。

ー強い女性像ということで言えば、色は…

小笠原 ダーク。黒と赤。

青木 黒と赤というのはコントラストが強いし、ハードな印象ですよね。パワーショルダーに黒と赤というスタイルはパンツスーツでもドレスでもたくさん出ていました。黒赤のバラ柄のドレスとか、黒赤のパンツスーツがかっこ良かったです。

(左から)アトライン/マルニ/MSGM

ー前に80’sスタイルが打ち出されたのはいつだっけ。

小笠原 これだけ80’sっていうのはない。60’sや70’sは何度も取り上げられているけど、80’sはダサいイメージだから、あまり積極的に取り上げてこなかったんじゃないの。流行の大きなサイクルは30年というのがあるから。例えば、50年代と80年代。2010年に出てきても良かったんだけど、なかったし。

青木 こんなに肩パットが入っているのは記憶にないですね。

ーで、それは新鮮なの?

青木 新鮮か、と言われると?ですが、着てみたいと思えるものもありました。強いものからさりげなく取り入れたものまで、さじ加減はブランドによっていろいろあるので、多くの人が楽しめると思う。

ー日本人バイヤーの80’sスタイルの評価は。

青木 新しいものを積極的に買ってるお店は、80年代スタイルの仕入れを強く意識していると言っているし、エレガンスが好きなバイヤーも、肩にポイントを置いたものには注目している。何れにせよ、大なり小なりポイントは「肩」ということになります。トレンドをまとめた19日付でも報道していますが、そのさじ加減をセミナーではより詳しくお伝えできると思います。

(左)ジバンシィ/(右)コシェ

ーしかし、なんで80’sが面白いの?

小笠原 たいして面白くはない。そう言ってしまうとあれだけど(笑)。でも、明確に「肩」だもんね。自分的には、面白いショーもあれば、面白くないショーもあった。

ーストリートからエレガンスへの転換というのは?

小笠原 続いているんだよ。ストリートブランドは得意のストリートなところもやっているけど、エレガンスのアイテムを増やしているからね。端的に言えば、エレガンスとかクラシックへの転換が大きな流れで、肩に特徴を置いたデザインが増えているということ。

青木 ストリート感が薄れていることの象徴として、ファッションショーのスタイルではスニーカーが減りました。もちろん、スニーカーは売れる商材ですし、サンプルは皆さん作っているんですが、ショーではショートブーツやニーハイブーツ、パンプスがとても多かったです。ポインテッドトゥやチャンキーヒールが増えました。

ーしかし、なんで80’s?

青木 ニューヨークで始まった「MeToo運動」のグローバルでの広がりが背景、というのがわかりやすい説明でしょうか。男女平等が形式的に喧伝されても、まだまだ男性が強い社会ですから、女性、特に地位のある女性がもっとモノを言い出した。80年代以降に女性の社会進出が増えたアメリカですら、完全に男女平等ではないでしょうからね。80年代と違ってSNSという便利なツールで主張する女性が増えて、これを洋服の形にしたらこんな感じ、みたいな。


青木規子記者と小笠原拓郎編集委員

ー注目していた「セリーヌ」と「サンローラン」は?

小笠原 「サンローラン」は大人っぽくなった。ロリータのにおいは少なくなって、悪くはなかったよ。「セリーヌ」に移っても「俺のラインをやり続ける」と言ったエディ(・スリマン)のショーは始まったらびっくり。70年代のセリーヌのアーカイブを引っ張ってきたような、クラシックなフレンチエレガンスをみせた。

青木 強い女性像を多くのブランドが打ち出していたので、エディはどれほど強いものを出すのかと思っていたのですが、想像とは全く違いました。ただ、70年代スタイルは女性はみんな好きですからね、すごく売れそうです。ボントン(上品な風采、育ちのいい)な感じ、シックでエレガンとな雰囲気は、新しいかどうかはさておき、「欲しい」と思わせました。ボウタイとかキュロットとかボックスプリーツスカートとか。

サンローラン

ーセリーヌは安心したんじゃない。

小笠原 ホッとしただろうね。「あ、これで売れるものが出てそうだな」みたいな。社内でもなんか色々あったんだろうね(笑)。

青木 しかし、徹底的に変わったから逆に面白かったです。

セリーヌ

ー改装していたセリーヌのお店が3月頭にオープンした。作りはどうなったの。

青木 エディの前回のコレクションに倣ってソリッドなお店をつくる予定だったそうですけど、ソリッドな中にナチュラルな木の椅子が置かれてました。本人の中で心境が変化したそうですが、結果、ソリッドとナチュラルが融合した店になってました。小笠原さん、一番良かったブランドの話は?

小笠原 「コムデギャルソン」だね。いつも期待しているけど、今回はすごく良かった。何が凄いか自分でも分からないし説明できないのが凄いと言っておく。他にはないコレクション。凄いコレクションを見ても、大体凄い理由はわかるんだけど、今回はまだ凄い理由がわからない。それぐらい凄いとしか表現できない。

ー凄いのはわかったけど、何が凄いかわからない。補ってよ。

小笠原 強い女性像と言うのが今回の大テーマと言ってきたけど、コムデギャルソンのコレクションは本当に強い。どこからそれが出てるのかはまだ分からないんだけど、そう思わせることが凄いとしか今は言えない。

コムデギャルソン

ーある意味、強い女性像の本命とも言える?

小笠原 まあ、強い女性像に関しては、毎回出してきているブランドだからね。これまで、服を解体して再構築することをやってきたけど、それが次のステージに登った。みたことの無い凄さだったから。

ー前回の方が川久保さんの気持ちがストレートに伝わっていたのでは、という評価もある。

小笠原 足していけば、誰でもそうなるとは限らないでしょ。川久保さんの今回は、足して何かを生み出す、と言うのが計算されているようにみえる。ニュース記事を書いた後に少し考えたんだけど、「アライア」の物作りと共通するものを感じたんだよね。詳しくはセミナーで話します。アプローチはアライアとは異なるんだけど。

ー他によかったブランドは。

小笠原 「ヴァレンティノ」が冴えていた。期待通り。「マルジェラ」も悪くなかったな。

青木 私もヴァレンティノが良かったですね。そんな難しいことはやっていないんですけど、クラシックなドレスやコートに「アンダーカバー」のストリートな気分のあるグラフィックをのせている。それを重苦しくなく、軽やかに出してきた。「ロミオとジュリエット」などの選曲も良かったし、全体的な完成度が高い気がしました。

ヴァレンティノ

小笠原 「グッチ」も面白かった。あれはもう、ミケーレが服というより物語をつくっているような感じだね。ショーとして面白い。服も他のものと合わせることができる汎用性が高いから売れるんだろうね。

グッチ(写真=ブランド提供)

ー「ジル・サンダー」は。

小笠原 悪くはなかったけどね。期待以上ではなかったかな。惜しいね。

青木 私は見れてないんですけど、心地良い空気感のリラックススタイルが揃ってました。青山の店も素敵ですし、ポストフィービー的な存在として売れそうです。

ーなるほど。

青木 お洋服の話からはそれちゃいますけど、「フェンディ」のショーは記憶に残るものでした。ご存知のようにカール(・ラガーフェルド)が亡くなった直後だったので。フェンディとカールは、「シャネル」よりもずっと長く一緒にやっていて、ブランドとカールの関係も親密でしたし。カールが亡くなる直前まで電話で話していたそうで、ショー会場の色などもカールの意向が強く反映されていたようです。本当にカールの最後のコレクションだったんだと感慨深かったです。

フェンディ

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