繊研新聞社が全国の服飾系専門学校に行ったアンケート(有効回答37校)によると、服飾系専門学校の入学者数は前年に比べ回復気味なものの、減少傾向が続いている。24年4月の入学者数は前年より「減った」学校が40%で、前年比13ポイントの低下ながら回答数は最多。「増えた」と答えた学校は30%で8ポイント増、「変わらない」も30%で5ポイント増となった。少子化の影響やアパレル産業の不振を背景に、大都市圏の大規模校中心に苦戦が目立つ。時代の変化に合わせた教育内容や販促手法を導入し、入学者の確保を目指す学校が多い。
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人気低下を危惧
「減った」と回答した15校のうち、「大きく減った」と答えたのは東京と地方の3校。減少の要因として「18歳人口の減少と大学志向の強まり」を挙げる学校が多く、「高卒の入学者が減って流通系が大幅に減った」と複数校が回答。「コロナ禍で不安定な産業という印象が強まり、専門学校進学者でも、美容系や医療、動物、ゲームやIT系などを志望する高校生が増えた」との回答も目立ち、ファッション分野の人気低下を危惧(きぐ)する声が多い。地方校では「コロナの終息で県外への進学者が増えた影響」と答えた学校もあった。
認知度高めて
一方、「増えた」と答えたのは11校。モード学園は「東京コレクションやメタバース(インターネット上の仮想空間)分野などでの卒業生の活躍、コンテストでの実績が感度や本気度の高い高校生に、就職率の高さが保護者にも支持され、大幅に増加したのでは」と回答。ファッションカレッジ桜丘は「インスタグラムの運用の徹底でフォロワーが1万4000人を超え、認知度が向上した。「アイドルプロデュース衣装製作」の授業が、衣装に興味のある高校生の取り込みにつながり、今春は入学者が大幅に増えた」と答えた。
一部の学校では、学び直しで入学する社会人や、コロナ後に戻ってきた留学生が増えている。「4年制学科の新設で、服作り系の入学者が前年より10%増えた」「独自のブランド作りや店舗運営に取り組む授業が人気で今春、物作り系の1学科は入学者がほぼ倍増となった」など短期の学科より、しっかり勉強できる学科が人気なようだ。高校訪問やオープンキャンパスの再開、インスタグラムやティックトックを使った宣伝などの効果で、入学者が増えたとの回答も多かった。
「25年度に向けた入学者確保策」の問いには「服飾課程のある高校や日本語学校の訪問、社会人や保護者向け説明会を新たに始めたり、対象を絞って直接対面する機会を多く設ける」と答えた学校が多い。「ティックトックなどSNSを使った発信の強化」との回答も引き続き多い。
地域と連携強め
総合選抜型入試で、夏休み前に進学先を決める高校生が増えている現状に対応し、「新たに総合選抜型入試を導入し、6月から受け付けを開始した」「総合選抜型入試で論文を無くし、ハードルを下げた」など入試制度を見直す動きも目立つ。「地域と連携し、小・中学生向けワークショップや中学、高校での出張授業を行う」学校もある。
過去3年の就職率についての設問では、24年3月の卒業生の「就職希望者の就職率」を見ると、「100%」だった学校は回答校の43%(前年は42%)で前年比微増ながら、「90%以上」と答えた学校は全体の67%(61%)で6ポイント増加。「80%台」も24%(14%)で10ポイント増えた一方、「80%未満」は3%(17%)で14ポイント減となった。
就職率100%だった学校は、岡山など地元の企業や地域との連携が強い地方校、中京地区や九州に多い。90%以上が全体の3分の2、80%以上が9割以上を占め、コロナ下に低下していた就職率が全体に回復しつつあることが分かる。
ファッション業界や企業への要望では「進路として選択しやすくするために、縫製職や販売職の賃金と地位の向上を」「後継者育成の観点で技術職の新卒採用を増やし、定期的に採用してほしい」「デジタル系など新しい分野も採用して」「ファッションの楽しさや奥深さを一般消費者に伝え、業界を活性化してほしい」などの声が強かった。