美しいランジェリーをまとった姿で送り出したい――インナーウェア企画・生産のETOE(エトエ、東京、渡邊絵美社長)は、亡くなった人がまとう下着「ラストランジェリー」を開発している。
ラストランジェリーの構想は、渡邊社長の子供の頃の記憶が原点にある。「祖父のお通夜の日、寝ている布団をはいだら、祖父がオムツをしていた。その時の衝撃が忘れられない」。約20年の下着デザイナーとしてのキャリアの中で、ずっと心の片隅にあったラストランジェリーのアイデア。今でも白装束の下はオムツをはかせることがほとんどというが、2年前に起業して新しいことにチャレンジできる環境が整ったことで、新規事業として開発に着手した。
「きれいに化粧をして送り出すように、きれいな下着で送り出せたら、残された家族や友人にとって思い出になり、次に進む活力になるのでは」と渡邊社長。長年の思いを形にするため、会社のある足立区からの支援や葬儀社や納棺師からの助言も受けながら、ラストランジェリーとして形にしてきた。
限られた時間の中で行う葬儀に組み込んでもらうため、短時間で着せやすいパターンやサイズ設計、仕様の改良を重ねた。女性用は胸元までレースでたっぷり使ったハーフトップ型のトップと、フレアパンツ型のボトム。身生地はアルミを織り込んだ保冷性のある布帛を使う。当初は女性用のみを想定していたが、男性物の要望もあるとつかみ、男性用のボトムも作った。それぞれシンプルな物からゴージャスなタイプまで、3種類を企画した。遺体に装着しやすい仕様に関して特許を申請中だ。
2月に出店した東京・有楽町の体験型ショップ「b8ta」(ベータ)の来店者の声や、開発に当たって話を聞いた人の多くから共感が得られ、「ぜひ作って欲しい」という声がもらえたことも、開発を後押しした。
既存のインナーウェア事業とは異なる業界に向けた商品のため、6月の合同展「フューネラルビジネスフェア」など、今後、葬儀や終活関連の合同展に出展し、認知度向上やニーズ把握、さらなる商品改良、販路開拓に努める。
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同社はデザイナーの渡邊社長がパタンナーと20年4月に設立した、インナーウェアの企画・製造企業。ファンデーション、肌着、ショーツなどインナーアイテムから、ファッションブランドのカップ付きウェアなど幅広く対応する。