止まらず、ドメコンの次に進まないと

2015/09/17 17:57 更新


 「エンフォルド」(バロックジャパンリミテッド)の快進撃が続いている。“ドメコン”(ドメスティックコンテンポラリー)市場を切り開き、14~15年秋冬からは欧州でも展示会を開催。8月末には、東京・丸の内に初の路面店を開いた。クリエーティブディレクターの植田みずきさんに今の思いを聞いた。
(本紙9月15日付け1面記事を加筆)

 

 

 

 

"立ち上げ5年を機に、固定観念をリセットしたい"

 

――12年春にスタートし、4年でここまできた。今後の課題は。
 
 来年が立ち上げ5年目なので、そのタイミングでリセットというか、ブランディングを見直します。これまで掲げてきたコンセプトを変えるわけではありませんが、新しい挑戦を続けていかないと飽きられてしまう。

 5年目というのは、そのいいタイミングだなと思って。売り上げが下がってから見直すというのでは違いますから。

 ブランドを続けていると、強みや弱みの固定観念ができてきます。それらを一度全部崩して、単純に今何が欲しくて、何が求められているのかを考え直したい。
 
 例えば、ウエストゴムのジョドパーズパンツは、ブランドの顔としてよく取り上げられる商品です。でも、うちには他にもパンツのバリエーションがある。ブランドの顔として既に認知されている商品とは別に、デザインチームが顔だと思っているものを、今後はよりしっかり伝えていきたいと思っています。

 

エンフォルド植田さん全身横

 

 価格の幅も上に広げていきたい。素材から企画を発信するというスタンスでブランドを始めましたが、使いたい素材があっても価格の制限で使えないことは多い。

 良い素材はいくらでもあるから、今よりも500円~1000円高い素材にした時にどうなるか、どう価格に落とし込んでいくか、そのバランスを探っていきます。実験的なデザインを揃えるコレクションラインの中ではなく、通常ラインの中でより良い素材を使っていきたいと考えています。

 

"市場を作り出すことが好きだし、これまでもやってきた"

 

――SPA主体のヤングアパレルメーカーのブランドでありながら、デザイナーズブランドのようにセレクトショップへの卸を行った。それが新鮮で、結果として新しい市場を生み出すことにつながった。

 元々、「バロックジャパンでありながら、バロックジャパンでないもの」を考えてスタートしたブランドです。できれば、「スライ」をやっていた植田みずきがやっているということも伏せたかった。「若い子がプロデュースしているブランド」という風に見られたくなかったし、洋服で勝負したかったですから。

 高感度なセレクトショップを開拓するために、セールス会社と契約したり、社内に営業担当を入れたわけではありません。エンフォルドを扱って欲しいと思った「バーニーズニューヨーク」などには、私が直接「どれだけ入れて欲しいか」をメールしました。

 一人の客として、どんなお店にエンフォルドがあったら買いたいかを考えてアプローチしていったんです。

 

エンフォルド植田さん顔アップ

 

――海外コンテンポラリーブランドの感覚を持った国内ブランドという“ドメコン”の切り口は、レディスファッション市場の台風の目になっている。フォロワーブランドも随分増えた。

 ドメコンって一番最初にカテゴライズされた時は「なるほど」と思いましたし、市場を築けたことはすごく良かった。ただ、そこだけには収まらないブランドになりたい。ドメコンに安住せず、新しいポジションに進まないといけないと思っています。 

 周りのブランドがどうかということよりも、うちとして、今の世の中とマッチしているのかをしっかり見ていきたい。

エンフォルド植田さん全身縦 

 今後は、ドメ(国内)とか海外とか、そういう枠が関係ないブランドになっていきたいと思っています。そのためにも海外で売っていくことが重要です。

 でも、コレクションブランドになりたいという意味ではありません。「コムデギャルソン」や「サカイ」のように、コレクションをやっている日本のブランドです、というのとは別のやり方じゃないと、うちはテーストとして違うと思う。

 着心地が良く、シルエットがきれいで使いやすい、でも他とは違うエッセンスがあるねっていう感覚を、海外でも感じてもらえるような存在でありたい。

 ブランドとして目指す位置を聞かれても、言葉にできません。新しいマーケットやポジションを築いていきたいって考えているから。それができて、初めてブランドとして成功したと言えると思う。

 あのブランドみたいになりたいって言っていたら、そこにはいけません。常に先駆者でありたい。そういうのが私は好きだし、これまでもやってきたから。

 

"海外展でのバイヤーの反応も、回を増すごとに良くなっている"

 

――路面1号店の出店先に丸の内を選んだ経緯は。

 路面店の出店はデビュー当時からずっと考えており、場所を探していました。青山と丸の内に出したくて、どちらが先でもいいと思っていたのですが、今回ちょうど狙っていた場所が空いたので丸の内に路面1号店を出すことになりました。

 大人の女性がストレスフリーで働ける服といういうイメージが当初からあったので、丸の内は親和性のある場所です。

エンフォルド店2エンフォルド店

 

 内装は、ウッドや打ちっ放しのコンクリート、大理石、タイルといったように、様々な要素をミックスしています。

 今までは百貨店の中だったから、店作りに規制がある中でやってきた。でもここはなんでもできる。でも、やりたいことがあり過ぎたので足りなくなっちゃいました。だから、青山に路面店を出す時には、もっと表現できたらいいなと思っています。

エンフォルド1516AW
「エンフォルド」15-16AWのコレクション



 青山への出店が、ブランドにとって一つの節目になると思う。国内で直営店をどっと広げるつもりはなくて、その分海外で売って行きたい。

 海外は、イタリアのトゥモローショールームと契約して展示会を行っています。回を重ねるごとに反応は良くなっていて、16年春夏はロンドン、ミラノ、パリで展示会をし、うまくいけば来年はニューヨークもスタートします。

 現在の海外の卸し先は、アジアやイタリアの専門店20店以上。今後は、海外でも日本と同じように百貨店での展開も目指していきたいと思っています。

(写真=加茂ヒロユキ)

関連キーワードTHE BEST POST



この記事に関連する記事