クールジャパン機構 大型案件へ投資拡大

2018/08/01 06:27 更新


 官民投資ファンドのクールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)は新経営体制となったのを機に、収益性を重視しながら、大型案件への投資を拡大、インバウンド(訪日外国人)需要が見込める分野などを強化する。

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 6月に社長兼CEO(最高経営責任者)に就任した北川直樹氏(元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役コーポレイト・エグゼクティブCEO)、専務COO(最高執行責任者)兼CIO(最高情報責任者)に就任した加藤有治氏(元ペルミラ・アドバイザーズ日本法人社長)らが明らかにした。

 同機構は日本の企業などの海外進出を支援し、ファッションを含めた日本の文化の発信を強化する目的で、13年に政府と複数の民間企業の出資で設立。14年度から17年度まで、29件で計約620億円を投資した。投資額の対象地域別の内訳はアジア約227億円(10件)、全世界約221億円(8件)、日本約75億円(4件)、中東約60億円(2件)、欧米約37億円(5件)で、分野別ではメディア・コンテンツ約290億円(10件)、ライフスタイル・ファッション約130億円(4件)、食・サービス約117億円(10件)など。「29件のうち、当初目標通りの成果が出なかった2件はエグジット(売却)したが、大多数は順調」(加藤専務)という。

 今後は「過去5年間の投資案件を検証し、その実績も踏まえながら、より精度の高い投資を行う」(北川社長)方針だ。これまでの注力分野のメディア・コンテンツ、ファッション・ライフスタイル、食・サービスに加え、分野を問わず、インバウンド(訪日外国人)への投資を拡大する。吉本興業などが出資し、大阪城公園内に来年2月開業予定の三つの劇場への投資は「その代表例の一つ」という。

 「政策目的と収益性のリバランスと投資規律をさらに強化する」(加藤専務)ことを投資実行の基本とし、「成長性が見込めない案件は早期にエグジットする」。一方で、「民間ができないリスクが高い案件にチャレンジする」(北川社長)方針。

 「例えば、映画作品を通じて撮影場所に多くの人が集まり、登場人物の髪形やファッションをまねたりするなどの現象がある。一つのコンテンツの成功に限らず、日本の魅力を海外に伝え、そこから様々な波及効果が生まれる案件への投資をしたい」と北川社長は強調する。

記者会見で方針を説明する北川社長兼CEO


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