アングローバルは21年春夏から新ブランド「キタン」を展開する。デザイナーの宮田ヴィクトリア紗枝は、米シアトル生まれで、帰国後も父の仕事とともに遊牧民のように各地を転々と暮らしの場を変えつつ育った。デビューとなる春夏は約40型の小さなコレクションながら、〝文化の交歓〟を合言葉に、長年にわたって受け継がれてきた美しい物作りや手仕事を背景に、点と点を線に結ぶような始末の良い物作りを目指している。
生地とパターンはオリジナルで、日本とフランス、インドで生産している。1900年代のアンティークの織物を解析し再解釈した生地や、インドの手紡ぎ手織りの素材などを使っている。例えば、ウォード染色のジャージーは、ピレネー山脈の近くの小さな町で100年もの歴史を持つ工場で染色から編み立て、縫製まで依頼した。インドではコットン・シルクカディを手紡ぎ手織りで生産し、日本でチュニックやイージーパンツに仕立てた。
日本の生地は、コットン・シルクのタイプライターや山形の強撚ニット、尾州のコットン・ヘンプなど。徳島の手染め藍デニムはエコテックス・スタンダード認証の環境に配慮した。南仏の伝統的な織物ピケ・ド・プロバンスをイメージした生地は、尾州で膨れジャカードで再現している。
パターンは、民族衣装や古い衣服の知識を生かしながら作る。四角い身頃に対して直角に袖を付け、足りない脇のパーツに継ぎを当てて補っていくというパターンは、アジアの古い衣装に見られるもの。オリエンタルなムードとともに、その簡素なパターンの考え方がモダンにも思えてくる。そんなパターンゆえ、ワンピースやスカート以外はジェンダーレスで着られる。グレーディングでユニセックスに対応する。
また、デニムや残糸や残布を生かしたカットソーや小物など、ささやかであってもサステイナブル(持続可能)な物作りを探求している。エスパドリーユは、自動車のエアバッグを再利用したアッパーでできている。物作りの背景や生地の見本を張り付けた資料は手作りで、そんなゆったりとしたペースにも今の時代らしさを感じることができる。