2030年近傍を見据えた長期ビジョン「G-STEP30」に邁進するユニチカグループ。23年度からビジョン達成へ向けた中期経営計画の第2弾「G-STEP30 2nd」がスタートした。前中計の成果も踏まえ、積み残した課題と新たな目標に挑戦する。
「3つのG」の長期ビジョン
G-STEPの「G」には、グロース(成長)、グローバル、ガバナンスの3つの意味を込めています。前期までの中計では、企業運営基盤の整備を掲げましたが、残念ながらコロナ禍の影響を受け、経営の数値目標はすべて未達に終わりました。グローバルはコロナの影響で構想の3分の1も進みませんでした。インドネシアでナイロンフィルムの新設は大きく遅延しましたが、新中計では増設効果が効いてくると期待しています。
グロースは、高付加価値品、当社の強い商品を伸ばすということで、主力のフィルムやガラス繊維ではお客様の評価を頂きました。繊維も含め環境配慮型商材の品ぞろえも整いました。ただ、コロナ禍で経済活動が鈍化したことで消費が低迷、半導体不足もあり自動車、電子、電気という有力市場が厳しい状況になりました。衣料用繊維も低調に推移、この結果販売数量が落ち込みました。一方で原燃料価格が高騰、販売価格への転嫁が60%ほどにとどまったことが業績に影響しました。販売価格への転嫁には時間がかかりますが、今期からはその成果が出てくると見ています。
ガバナンスは、正面から取り組み、社内体制も見直し、再構築できたと考えています。リスクマネジメントや広い意味での取締役会の機能強化も進みました。これは、新中計にも引継ぎ、徹底していかないといけません。
パイオニア精神とバイタリティーを呼び起こす
新中計では、25年度に連結売上高1500億円、営業利益70億円を目標に掲げています。売上高営業利益率は4.7%です。私自身は少しでも早く営業利益率を5%以上に高めたいと思っています。高分子事業は22年度に落とした利益を取り戻す。そして機能資材と繊維事業は、25年度は何としても黒字にする。
そのためには、まず原燃料コスト高に見合う価格改定を粘り強く進めます。二つ目に得意な分野、これまでに種を蒔いてきた商材の販売を伸ばす。特に環境対応素材にいっそう力を入れます。顧客に密着し、そのニーズをひらって、これに対応できるユニチカの持つ強い商材、バリューチェーンを生かせるものの販売を拡大していきます。逆にそれができないものについては、ポートフォリオを見直すことも考えていきます。
「3つのG」を支えるベースにあるのがサステナビリティプランです。プランでは8つの優先課題を3つの「P」に分類して提起しています。一つ目のPは「プロスペリティ(豊かさ・繫栄)」で、ここはビジネスに関連して①安全・安心②便利で快適③環境と共生の3つの「暮らし」の実現を掲げています。関連商材を25年度には19年度対比で1.6倍に伸ばす計画です。
二つ目のPは「プラネット(地球環境)」です。④環境と共生する企業活動の推進として、CO2排出量を13年対比で24%、産業廃棄物場外処理量を19年度対比8%、それぞれ削減する方針です。
3つ目のPは「ピープル(人間生活)」。⑤人権の尊重⑥働きがいのある会社づくり⑦ダイバーシティの推進⑧サプライチェーンマネジメントの強化がその内容です。ダイバーシティでは、25年度目標として、女性管理職比率8%、総合職本社採用女性比率30%、男性の育休取得率50%などを掲げています。人材育成、技術伝承は長期テーマであり、人への投資にはさらに力を入れていきたいと思います。
ユニチカは世界で初めて延伸ナイロンフィルムを事業化した会社です。アフターコロナの不透明な事業環境の中だからこそ、かつてのようなパイオニア精神、いい意味でのチャレンジする気持ち、そんなバイタリティーが求められると感じています。原点に戻ったダイナミズムを発揮して、新中計と長期ビジョンの達成を目指します。