22年春夏パリ・メンズコレクション 解体・再構築でモダンを探る

2021/06/28 06:29 更新


 22年春夏パリ・メンズコレクションは2日目、若手に交じり老舗ブランドやパリ常連のブランドが新作を披露した。久しぶりにパリ・メンズの日程に名を連ねたのは「バーバリー」。この間、必ずしもオフィシャルスケジュールに縛られることなく発表することもあったが、今回はパリでの発表となった。

(小笠原拓郎)

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 バーバリーは、砂漠のレイブパーティーを思わせる映像を配信した。テーマは「ユニバーサル・パスポート」。音楽と、その魅力に影響を受けたリカルド・ティッシの若かりしころの思い出がインスピレーションとなっている。バーバリーのアーカイブからの影響はもちろんあるのだろうが、ずいぶんと自由なイメージのコレクション。バーバリー=トラディショナルといった先入観から大きく離れて、アイテムが解体されて新しいアイテムへと変化していく。トレンチコートはラグランステッチの部分から袖がカットされ、白いステッチ糸を利かせたコンビネゾンも袖を外してボートネックのような襟ぐりに。シャツやトップには、コートのベルトのディテールがたくさん重ねられ斜めに揺れる。シャツやジャージートップには、ロールシャッハテストのようなシンメトリーの抽象柄、それがカムフラージュとシンクロする。フーディーやプルオーバーは胸回りを大きくカットアウトして、アブストラクトな雰囲気を強調する。アウトドアの自由な雰囲気とそこに集う人々の共通の価値観を感じさせるコレクション。

バーバリー© Courtesy of Burberry
バーバリー© Courtesy of Burberry

 JWアンダーソンは、ジョナサン・アンダーソンがコレクションについて語る動画と33枚のプリントした写真を通して春夏メンズとリゾートウィメンズコレクションを発表した。コレクションは前シーズン同様、ユルゲン・テラーによって、ロンドンの南東部にある住宅で撮影された。春夏は鮮やかな色がいっぱい。ピンク、グリーン、イエロー、ポピーレッド、エレクトリックブルー。斜めに走るストライプ柄のドレスのほか、大きなイチゴのプリントやジャカードに使われる。ウッドビーズを編んで描く花柄のドレスは、ジョナサンらしいクラフトを感じさせるもの。枕のような形と量感のパッデッドトップなど、風変わりなアイテムもある。しかし、たくさんのランニングショーツやイチゴのトラックスーツなど、キャッチーで楽しいアイテムに目を奪われる。難解なコンセプトではなく、分かりやすく売りやすいシーズンかもしれない。

JWアンダーソン
JWアンダーソン

 ファセッタズムは、夜の渋谷をさまようスケーターたちの映像で新作を披露した。ショルダー部分でパーツが外れたテーラーリング、バックヨークをファスナーで開けてシャツをのぞかせたスタイル、赤いチュールドレスにMA-1、白いフーディー。スケーターたちの夜のさまよいを付け狙う監視カメラとの攻防といった謎めいたストーリーだ。新作もファセッタズムらしいデコンストラクトなアイデアがいっぱい。白いフーディーはサイドのファスナーでシルエットを変え、赤いチュールドレスはスポーティーなパンツルックとレイヤードする。マドラスチェックのコートはトレーンを引くくらいバックが長い。解体再構築のストリートスタイルはファセッタズムのコードではあるものの、そこにどう新味を出していくのが問われるところ。春夏はしつけ糸を残したスリーブレスのテーラードジャケットが新しさを感じるアイテムであろうか。

ファセッタズム
ファセッタズム


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