21~22年秋冬ミラノ・メンズコレクション 現代のライフスタイル変化を意識

2021/01/19 11:00 更新


 21~22年秋冬ミラノ・メンズコレクションは、デジタル形式の発表がメインとなった。ショー形式で見せるブランドも、前シーズンとは異なり無観客でのショー映像を配信する手法が目立つ。目立つのは、現代の男性のライフスタイルの変化を意識した提案。オンとオフ、ビジネススタイルの変化を感じさせるコレクションが気にかかる。

(小笠原拓郎)

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 ラフ・シモンズを共同クリエイティブディレクターに迎えたプラダは、ミウッチャとラフによる初のメンズコレクションを見せた。色とりどりの空間をモデルが回っていくという映像で、その壁やカーペットの色と重なるような配色を揃えた。ベースとなるのはタイトなボディースーツのレイヤード。シックなスーツも袖をめくり、下に着た鮮やかなボディースーツとのコントラストで見せる。ジャカードニットのボディースーツのまま踊るモデルもいる。それが、現代のオンとオフのメンズスタイルを象徴するようにも思えてくる。スーツやコートで外に出る時とボディースーツで快適に過ごす時のコントラストのように感じられるからだ。そして、プラダの三角のロゴが象徴的に使われている。ボディースーツやアウターの襟の後ろに三角のマークがさまざまな素材で描かれる。時にその三角マークはポケットのようなディテールへと変身する。

プラダ

 ボディスーツとのコントラストとなるアウターは、ビッグサイズのブルゾンやコート。それがいかにもラフ・シモンズらしい。ピンクやパープルのMA-1タイプのブルゾンは、大きなフォルムとビニールのようなケミカルな風合いが面白い。コートやブルゾンの裏地や襟に、今シーズンのアイコンともいえるジャカードニットを使っている。ナイロンやビニールのようなタッチのアウターとジャカードニットの温かみがコントラストを描く。新しい提案としてはグローブというアクセサリーの発展のさせ方であろう。豊富なカラーバリエーションを揃えたグローブは、甲の部分にジップポケットを付けている。コインが余裕で入りそうなポケットサイズで、新しいアイテムとして使えそう。

プラダ

 レディスに続いて、メンズでもラフ・シモンズのカラーが強まった印象だが、市場はこの変化をどう受け止めるのであろうか。プラダのメンズの持つクラシックとインテリジェンスをモダンに変化させていく手法が、今後ラフの視点でどうなっていくのか。あまりラフの色が強くなりすぎて、プラダらしさがかすむようにはなって欲しくない。


プラダ

 フェンディは光を背景にしたコレクション。ネオンライトに彩られた会場に登場するのはコートと膝丈パンツのコーディネート。キルティングのパンツやジャケットも秋冬のアイコンとなる。キルティングはスパイラルのように斜めに刻まれたステッチが特徴。フェンディらしいファーコートもバイアス状に斜めの切り替えが目立つ。ボンバージャケットもフェンディらしいクオリティーを感じさせる。ショーのメインとなるのは、ネオンカラーを生かしたコートのバリエーション。アブストラクトな柄やフェンディのロゴのタイポグラフィーをネオンカラーで彩ってコートにのせた。「色彩と光への賞賛と、シュールな時代における連帯と絆という普遍的なメッセージ」をのせたコレクション。

フェンディ
フェンディ

 エルメネジルド・ゼニアはインダストリアルなムードをたたえた建築物を背景に、モデルたちが歩く映像を配信した。驚いたのは、タイドアップしたテーラードスタイルがいっさい無くなったことだ。ゼニアといえば、テーラードと、そのためのテキスタイルの企業だが、この間、現代におけるメンズスタイルの在り方を模索してきた。コロナ禍でビジネススタイルも変わる中で、秋冬はさらに一歩、踏み込んだということであろう。ネクタイの代わりにアイコンとなるのが、アウターと共地のベルトのディテールだ。セットアップのウエストから共地のベルトを揺らしてアクセントにする。ラップコートもウエストのベルトがアクセントとなる。テーマは「リセット」。「我々のスタイルを(再)解釈し、現代の男性へ(再)適応するために私たちのルーツを見直しました。あらゆる場所が一つとなり、新しい美学を創造するため、快適さとスタイルが融合する新たな着こなし方が確立されます」とアレッサンドロ・サルトリ。

エルメネジルド・ゼニア


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