【ニューヨーク=小笠原拓郎、杉本佳子通信員】20~21年秋冬ニューヨーク・コレクションは、いつになく中国人ジャーナリスト、バイヤーの姿がない。新型コロナウイルスの影響で中国からの入国制限がされていることもあって、セレブリティーも含めて中国人は見当たらない。他都市のファッションウィークにも中国ブランドが参加を見合わせるという報道があり、今後のバイイングを含めて深刻な影響が出始めている。
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ザ・ロウはミニマルななかに秘めたエレガンスを見せた。アメリカの彫刻家ビバリー・ペッパーのアートが飾られた空間に、エルビス・プレスリーの「好きにならずにいられない」の柔らかなメロディーが流れる。そこにザ・ロウらしい素材とカットの美しさを際立たせたシンプルなラインが登場する。グレー、サンド、ベージュ、シックな色のトーン・オン・トーンのスタイルは縦のラインを強調したシルエット。襟をそぎ落としたテーラードジャケットのスリーピース、わずかにドレープを見せるストレートラインのシャツドレス。いずれもシンプルで抑制の利いたスタイルだが、それゆえにカッティングや素材感が映える。
ダブルフェイスカシミヤのコートにワッフルのようなキルティングのドレスは、丁寧に作られた素材を生かした流れるフォルム。頭をすっぽり包むニットのヘッドピースとブルーのシャツが、抑えた色調の中でアクセントとなる。プレスリーの1曲だけにのせた33ルックに絞り込んだコレクション。そのミニマルな構成が、シンプルなラインに振れた前シーズンのトレンドが秋冬も継続していくことを予感させる。
プロエンザ・スクーラーは、斜めにずれたアシンメトリーのディテールを取り入れた。ドレスやコートのショルダーラインは片側だけがずり落ちたようにオフショルダーになっている。普通のテーラードジャケットをわざわざ片袖だけをずらしてきたようなものもあれば、完全にアシンメトリーのワンショルダーのドレスまである。ワンショルダードレスにニットのブラトップでコントラストを付け、ベアトップジャケットの胸元にリブニットを飾る。パネルプリントの四角い布をアシンメトリーに流し、ベアトップドレスの後ろ身頃に切り替えた布をなびかせる。
ニューヨーク・コレクションの中では最もコンセプチュアルな服作りをするデザインデュオだが、この秋冬はいつもほどコンセプチュアルには感じなかった。斜めにずれたディテールをポイントにしながらも、実際には普通に着られるものも多いように思われたからだ。
(写真=大原広和)
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