”プライスラインは絶対に守りたい”

2013/10/21 11:54 更新


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 ユアサンクチュアリは、おしゃれな大人の女性たちの支持を集めるレディスセレクトショップ、ザ・シークレットクロゼットを運営する会社だ。40代の女性を中心とする、大きくはないが活発なマーケットを開拓し、引っ張る存在として注目されている。現在都内に3店の規模ではあるが、7年前に新しく興した会社が成功させた業態として、際立つ。セレクトショップのディレクターなどを経て独立し、ここまで築いた代表取締役の小野瀬慶子さんに話を聞いた。ーー繊研新聞9月18日付けより

 



■居心地のいい時間と空間を提供

 

――ビジネスの現状は。

 東京・神宮前と玉川高島屋SC、東京ミッドタウンの3店舗の運営とオリジナルの卸で、卸し先は百貨店のほか、地域一番店と呼べるような、ファッションが本当に好きな顧客を持っている専門店です。ですが3店がしっかり稼働している今、卸売りの実績は全体の5%程度。90%強が小売りでの売り上げになっています。直営店の商品構成は、秋冬の実績ベースで仕入れが65%、「ザ・シークレットクロゼット」「ザ・シークレットクロゼット・チャーム」の商品は35%です。

 ただ、オリジナルは35%とはいっても、特にSCで当たっていて、人気品番は店に出してすぐにソールドアウトという傾向が強く、次のシーズンまで待っていただくものもあります。企画生産チームを確立して、それとともにオリジナルを少しずつ拡大していく予定です。

――それぞれの店は。

 07年に店を始めて13年9月期で6年になりました。神宮前の店はしっかり伸びていて、今年も前年比6%増です。玉川高島屋SC店は、最初の1年は苦戦するかもしれないが、お客がついてきたら変わると言われていましたが、その通りになっています。この9
月は前年比20%強の伸びで、顧客もできました。まとめ買いも多く、高単価の商品もよく売れています。ミッドタウン店(写真下)も、気持ちよく買い物していただけるまでにはまだまだですが、環境の整ったエリアですし、数字は取れています。

ザシークレットクロゼット

――商業施設への出店に踏み切ったのは。

 1店舗主義で行こうと考えていたわけではありません。神宮前の店は、じっくり時間をかけて買い物してもらいたいというコンセプトだったんですが、少し混んできてしまったのです。便利とは言えない立地ですが、月坪効率は年間通して100万円です。最初のころから通っていただいたお客様と新しいお客様がバッティングする状況になっていました。

 また、雑誌に掲載されるなどして知名度も上がりました。ブランドの価値をキープするためには、受け皿を増やしていった方が正しいのかな、という判断です。それで、創業5年目の節目を目指して出店に動き始めたのです。観光客の商業エリアではなく、生活に根付いた、私たちがターゲットとする人たちが住んでいるエリア、オープンしてからも、うちのお客様がいるのかどうかということを条件に考えました。

 神宮前の店は依然、混んでいますが、3回に1回は来るけれど、あとは立ち寄りやすいミッドタウンで、というお客様も増えました。地方から来る方もミッドタウンが多くなっています。玉川高島屋SCもそうですが、思ったよりも30代のお客様がいらっしゃいます。

 神宮前店は不便な場所ということもあり、雑誌などを見て何回もお電話をいただくんですが、たどり着けないお客様がまだいるんです。そうした方がこれからも増えると思いますし、伸び代は大きいと感じています。スタッフの努力もあり、ここまでやって来れました。

――成長の要因は。

 私たちが描いている女性像をターゲットにしている業態が、ほかになかったこともあると思います。私たちの対象ははっきりしていて、ファッションが好き、ファッションの経験値が高い、生活力もあり自由に洋服の購買の意思を決定できる。そんな大人の女性にふさわしいデザインと品質の両面を備えたワードローブで、プライベートクローゼット代わりに使ってもらいたい、ということを目指しました。

 そして、サービスを世界中で受け慣れている方たちですから、ただ売るだけではなく、居心地のいい時間と空間を提供する。それが明確なイメージとしてあったわけです。

 

■仕事で得られる達成感は他に代えられない

 

――店を出そうと思ったのは。

 独立する前のことですが、たとえば仕事ですてきな先輩方に会うわけです。いつもきちんとおしゃれして、ファッションにお金を使える人たち。この人たちはいったいどこで買い物してるんだろうかと、いつも考えていました。そんな女性たちの一番の店になりたいと思ったのです。

――最初に目指したのは。

 瞬間的に何か仕掛けて消費をあおり、売り上げを取るタイプのビジネスではなく、じっくり顧客層を築いて信頼関係を作り、継続的に伸びていく売り方を目指しましたし、目指しています。派手なことはせず、来ていただいた方に豊かなショッピング体験と、いい時間を過ごしていただく。そういうことが蓄積され継続されて、顧客が増え、静かに数字が伸びていくという姿をイメージしました。

 様々なブランドを仕入れて売っていますが、他人ののれんを借り、頼るのではなく、自分たちのザ・シークレットクロゼットという店のブランドの価値を創造していきたい、それにチャレンジしてみたいと思ったのです。

――今後のビジョンは

 壮大な計画はありませんが、たとえば自社サイトの通販では日本全国から注文があります。直営店には「一度来て見たかったんです」という方もいます。ファッションのトップの層からスタートして、それほどではないけれどクオリティーにはこだわりがある、豊かな生活を志向しているという方たちに名前が知られるようにもなりました。丁寧に作られていて素材も良く、時代性がある商品に対するマーケットは、意外に大きいのではないでしょうか。

 6年前に店を始めた時は、もう少しキャッチーなイメージのブランドが主流でしたが、大震災を経て、世の中も変わってきました。どうせ買うならクオリティーの高いものを、というニーズが大きくなっていると思います。

 私がこの店を始めた時のチャレンジのもう一つは、ビジネスはもちろん拡大したいですが、今のプライスラインは絶対に守りたいということです。それがとても重要なポイントなのです。たとえば少し安めのものを売る絵も描いてみたことはありますが、それをする意味はないのではないか。

 今のクオリティーを保ちながらどう拡大するか。プライスを落とさないことと、マーケット規模との接点を見極めなければなりません。私の仕事は数字を拡大するのではなく、ザ・シークレットクロゼットのブランド価値を大きくすることだと思っています。

――販売員の登用や教育、女性として考えることなど。

 販売員に関しては、特別なマニュアルはありません。私が何を目指しているかを繰り返し伝えるのが基本です。そして、目指す結果を出すにはどうしたらいいか、自分で組み立て、考えて行動するように指導しています。商品を売るんだけど商品の説明はするな、そういうアプローチではないやり方でお客様に接して欲しい、など、最初のハードルは高く、難しいようですが。

 細かい技術ではなくて、自分が買い物に行ったときにどうされたら気持ちがいいか、それを考えられるかどうかです。そして、こういう売り方をしたい、こういう店を目指したいという志向があり、お客様から信頼感を得られた社員は、ものすごく売っています。

 会社運営で大事にしているのは、人です。人に対して時間を取っていますし、半期ごとの評価にもすごく時間をかけています。評価は「私がんばったから」ではなく、きちんと結果を出した人にメリハリをつけ、公平という名の不公平にならないように、評価の内容が納得できるようにしています。

 女性に長く働いてもらいたいですし、いろんな人生の節目に自分の意志で物事を選択してもらいたいと思っています。そのためには、仕事が大事な要素です。その一方で、本当にプロ意識を持って働いていますかと女性に言いたい。

 これは女性も男性も一緒ですが、プロとして会社に貢献できる何かがなければ。人生にはいろんな楽しみがありますが、仕事で得られる達成感は、他のものとは代えられないものです。それを経験してもらいたいし、それに応えてくるスタッフには、本当にチャンスをあげたいと思います。

 

おのせ・けいこ 1966年生まれ。88年慶應義塾大学商学部卒業。91年文化服装学院アパレルデザイン科卒業。91年4月から96年6月伊藤忠ファッションシステム勤務。96年7月から03年9月ユナイテッドアローズ勤務、「チェンジズ」を立ち上げる。03年10月から同社と業務委託契約。05年から09年まで家族の転勤に伴いロンドンにベースを移す。06年12月ユアサンクチュアリ設立。

ユアサンクチュアリ 06年の会社設立から準備期間を経て、07年7月、東京・神宮前にレディスセレクトショップ「ザ・シークレットクロゼット」をオープン。同時にオリジナルの「ザ・シークレットクロゼット」をスタート、コレクションを発表している。商品のバイイングやオリジナルのディレクションは、小野瀬氏が手掛ける。12年にはカットソー中心のライン「ザ・シークレットクロゼット・チャーム」も発売。12年8月に2号店を玉川高島屋SC南館1階に、13年4月に3号店を東京ミッドタウン・ガレリア2階にオープンした。百貨店での期間限定店やファッション誌とのコラボレーションによる販売なども行っている。

 

記者メモ 店を出してブランドを作って話題になっても、それを継続するのは本当に難しい。何年か後に「そういえば、あの店どうなった?」になるのが大半だ。まだ6年とはいえ、そんな時代にここまでの存在感を築くのは、並大抵の努力ではなかったと思う。その決断力と実行力、逃げずに継続する小野瀬さんの底力を改めて知った。
 ここ1、2年、大人の女性の新しいマーケットの動きを記事にしなければと思い立ったのは、ザ・シークレットクロゼットが売れていると聞いたのがきっかけだった。記者自身の買い物の時の実感も重なって、小野瀬さんの話に共感した。このマーケットにはまだ可能性がある。考えてみたら記者のたんすには、大手セレクト勤務時代も含む小野瀬さんが買い付けたり作ったりした服や靴がたくさんあった。共感の品を、これからも作り続けてほしい。(赤間りか)

 

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